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ファストリ中間決算は増収増益で着地、柳井正氏は説明会で何を語ったのか

ファーストリテイリング(山口県/柳井正会長兼社長)が4月14日に発表した2022年8月期第2四半期連結決算(IFRS)は、売上収益が1兆2189億円(対前年同期101.3%/前年同期から161億円増)、営業利益が1892億円(同112.7%/同212億円増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1468億円(同138.7%/同146億円増)と増収増益だった。増収には、海外ユニクロ事業の伸長が寄与。営業利益は、販管費率が1.0ポイント(pt)上昇した一方で、粗利益率が1.7pt改善したことによる。

(i-stock/TonyBaggett)

業績は回復中もコロナ前の水準には戻らず

 セグメント別の事業の概況見ていくと、国内ユニクロ事業の売上収益は、対前年同期比10.2%減の4425億円だった。自宅でくつろげる室内着やエアリズムマスクといった商品が、前年度好調だった反動減に加え、冬物商品を中心とした品切れに伴う機会損失が足を引っ張った。

 粗利益率は、原材料費・物流費の高騰を値引き抑制でカバーした結果、同0.9pt改善の51.6%だった。一方で販管費は、金額ベースで前年度以内に抑えたものの、減収影響により販管費率が2.6pt悪化、結果として営業利益率は2.6pt低下の18.3%だった。

 海外ユニクロ事業の売上収益は、同13.7%増の5932億円だった。新型コロナまん延に伴うロックダウンなどにより、「グレーターチャイナ」における売上が落ち込んだ一方で、欧米の大幅な伸長が寄与した。ここ数年で海外ユニクロ事業に占める欧米のウエイトは2割にまで上昇、グレーターチャイナに次ぐ第2の柱に育っている。

 粗利益率は値引き抑制効果でカバーした結果、同2.9pt改善の54.4%だった。販管費も金額ベースでは増加したものの、増収効果によって前年度並みにとどめた。その結果、営業利益率は4.0pt低下の16.9%となっている。

 ジーユー事業についてはサプライチェーンの停滞に伴う機会ロスや、高温が続いたことによる秋冬物不調などにより売上収益は、同7.4%減の1228億円だった。

 このほか、グローバル事業についてはグループ全体への貢献はまだまだ小さいものの、セオリーとのコラボブランド「UNIQLO×Theory」などが好調に推移した。

通期でも増収増益を予想! 柳井氏が決算説明会で語ったこと

 2022年8月期通期の業績予想では、売上収益が対前期比3.1%増の2兆2000億円、営業利益が同8.4%増の2700億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同11.9%増の1900億円を見込み。売上収益こそ18年2月期の2兆2905億円に届かないものの、営業利益と当期利益は過去最高を更新する見通しだ。

 決算説明会では、柳井正会長兼社長が同社の将来展望を語っている。柳井氏の話は企業の存在意義や世界平和にまでおよび、同氏のスケールの大きさと熱い想いがひしひしと伝わってきた。

 まず、アフターコロナを見据えた成長加速と意欲的出店の再スタートについて。広島市に「ユニーク・クロージング・ウェアハウス(ユニクロ)」の第1号店をオープンさせたのが1984年のこと。それから30年足らずで同社の売上は1兆円を超えた。アフターコロナを見据え、ユニクロはさらなる成長を模索する構えだが、国内市場はすでに成熟状態にあり、本気で成長をめざすなら今まで以上に海外展開に注力せざるを得ない。

今後は出店にアクセル

 コロナ禍を背景に抑えてきたこれまでは抑制傾向にあった出店にもドライブをかける考えだ。4月も、弧を描く街並みで知られるロンドンのリージェントストーリーに、セオリーと共同で店舗を立ち上げる。もちろん出店加速だけでなく、足元を支える人材育成にも力を入れる。

 同社は、常に新しい世代の育成に心を配ってきた。すでに次世代に引き継ぐ準備はあらかた整っているようだ。

 ただし、業績だけが伸びればよいというものではない。柳井氏は、「企業は世の中にとってよいことをする存在でなければいけない」と訴える。ファーストリテイリングは世界27カ国に進出、店舗数は3500店舗以上に達し、多くのサプライヤーが係わっている。多くのパートナーとの共存共栄をめざすと同時に、社会にも貢献していかなければいけない。

 柳井氏は「取り組みはまだ十分とはいえない」と認める。今後の行動に注目したい。

「あらゆる戦争に強く反対する」

 柳井氏はロシアのウクライナ侵略にも触れ、「人権を踏みにじり生活を脅かす侵攻を非難する」と強い言葉で非難した。企業経営者としては、踏み込んだ発言と言えよう。同社は2010年よりロシア事業をスタート、現在は50店舗を展開していたが、今回の事件を受けて3月21日に事業を停止した。

 さらに注目すべきは、「平和実現のために具体的な行動をとる、企業としての役割を積極的に果たしていく」とコミットメントした点だ。「対立構造を解消し世界が協調できる、そのために企業ができることはたくさんある」と柳井氏は考える。

 同社は、平和社会実現に向けて寄付活動など最大限のサポートを続けている。もちろん同社のビジネス自体が平和産業であり、機能的で良質な商品の供給を通じて人々に快適な生活をもたらすと同時に、ビジネスを通じて経済成長や雇用確保に貢献するのだ。

 ユニクロのSPA(製造小売業)に支えられた圧倒的低コストと常識にとらわれない商品開発は、年齢・所得などあらゆる階層を超えて消費者の支持を集めた。ユニクロは、ファッション業界を大きく変えただけでなく、私たちの生活スタイルを一変させた。

 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

 ファーストリテイリングがもたらす未来に期待したい。