米国や欧州諸国と比べると、市場寡占化はそれほど進んでいない日本の食品スーパー(SM)業界。だが、新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大による“特需”は落ち着きをみせ、消費者の節約志向が高まるほか、商品原価や光熱費の高騰などの課題も立ちはだかる。このようななかSM業界の上位集中は進んでいくのか。大型M&A(合併・買収)を経て成長してきた経緯を持つリージョナルの雄、アクシアル リテイリング(新潟県:以下、アクシアル)の原和彦社長に聞いた。
深刻な経費上昇、経常利益額の1割以上
──新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年と21年はSM業界全体の業績がよく、22年はその反動が懸念されます。
原 20年度の業績は異常値でした。続く21年度は前年度と比べると売上・利益ともに減少しましたが、金額ベースでは過去2番目でしたので、21年度も異常な状況が続いたといえます。
4月1日にスタートした22年度は、足元で値上げが相次いでいます。商品原価に加え、ガソリン価格の高騰やドライバー人件費上昇による運送費の値上がりなどへの対応に追われています。それ以上に悩ましいのが光熱費の値上がりです。それら経費上昇分は経常利益額の1割以上に相当すると考えられ、経営に大きなインパクトを与えることは必至です。加えて、お客さまの節約志向が高まっていますので、今年度は大変厳しい年になると予測しています。
──現在の日本経済はエネルギー価格の上昇が幅広く物価を押し上げる「コストプッシュ型インフレ」です。しかし、国民の所得増を伴わない、いわゆる悪いインフレです。
原 そのとおりです。いいインフレであれば、日本経済の成長につながりますが、今はそうではない。原信・ナルスでは、今年の春闘において3%の賃上げを決定しました。加えて、期末特別手当を支給しました。厳しい年度と覚悟しつつも、いいインフレにつなげるためにいち企業としてできる限りの努力をしているつもりです。
賃上げも含めた経費上昇ぶんもカバーする施策を実行します。経費削減目標を達成するために、本部各部署のみならず各店舗からも多くの提案が出てきていますので、さらに削減を推し進めるつもりです。
決裁権限の職位を引き上げる
──具体的には、
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