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巨額赤字の前期から黒字転換へ、イオンの21年度決算と来期の成長戦略を解説

イオン(千葉県/吉田昭夫社長)は4月8日、2022年2月期の連結決算を発表した。コロナ禍の影響を大きく受け、前期に約710億円の最終赤字を計上した同社。最新決算で業績は回復したのだろうか。

オンライン決算説明会に臨んだイオンの吉田社長

連結決算は増収増益を確保

 イオンが4月8日に発表した2022年2月期の連結決算は、営業収益が対前期比1.3%増の8兆7159億円、営業利益が同15.8%増の1743億円、経常利益が同20.4%増の1670億円、当期純利益が65億円(前期は710億円の当期赤字)と増収増益を果たした。

 連結業績について、イオン吉田社長は「評価としては、よくない。だが、期中にまん防が続いた中で(その影響を)かなり打ち返すことができたのではないか」と総括。700億円もの最終赤字を計上した前期から、不動産売却などの利益調整をせずに黒字を確保したことを評価した。

 セグメント別に業績を見ていくと、「GMS事業」の営業収益は同1.8%減の3兆3004億円、営業赤字は23億円(前期は156億円の営業赤字)だった。中核のイオンリテール(千葉県/井手武美社長)の業績は営業収益が同7.6%減の1兆8173億円、85億円の営業赤字(前期は218億円の営業赤字)だった。コロナ禍の影響で減収に沈んだものの、粗利益率の改善や経費コントロールが奏功し、赤字額は前期より減少している。

 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディング(東京都/藤田元宏社長)やマックスバリュ各社を擁する「SM事業」の営業収益は同1.1%減少の2兆5206億円、営業利益は同26.7%減の305億円。前期との比較では減収減益となっているものの、コロナ前の20年2月期との比較では増収・大幅増益となっている。

ヘルス&ウエルネス事業が初めて1兆円を突破

 ウエルシアホールディングスを中心とする「ヘルス&ウエルネス事業」は、営業収益が同7.8%増の1兆310億円と初めて1兆円を突破。営業利益は同0.9%増の419億円だった。調剤併設店の増加による処方箋需要の取り込みにより、調剤売上高が大きく伸張(同14.4%増)。また、21年12月に広島県地盤のドラッグストア、ププレひまわりを買収するなどM&A(合併・買収)も増収に寄与した格好だ。

 イオンビッグ(愛知県小林健太郎社長)、ビッグ・エー(東京都/三浦弘社長)を擁するDS事業の営業収益は同2.3%減の3881億円、営業利益は同38.6%の27億円だった。減収・減益となったが、こちらSMと同様に20年2月期との比較では増収増益であり、業績は堅調に推移していると言ってよさそうだ。

 そのほか、イオンモール(千葉県/岩村康次社長)を中心とした「ディベロッパー事業」、施設管理のイオンディライト(大阪府/濵田和成社長)、児童向け遊戯施設運営のイオンファンタジー(千葉県/藤原徳也社長)などの「サービス・専門店事業」はそれぞれ増収増益を達成。コロナ禍で減収減益に沈んだ前期から一転、業績を回復させている。

ネットスーパー売上高750億円!黒字化も達成

 さて、2022年2月期はイオンにとって5カ年の中期経営計画の初年度にあたる。中期経営計画では、「デジタルシフトの加速と進化」を重点戦略の1つとして掲げており、その中でもとくに注目を集めているのが、ネットスーパーの展開だ。

 ほかの食品小売と同様に、イオングループでもネットスーパーは急成長している。イオンによれば、グループのネットスーパー売上高は19年度から年平均35%増のペースで伸長しており、22年2月期は750億円規模に成長。黒字化も果たしたという。

 イオンの吉田社長は「日本の食のEC化率は3%程度と言われ、20~30%とされる中国やアメリカと比べて大きなポテンシャルを秘めている。オンラインデリバリーといえば、イオンを第一に想起してもらえるようにしたい」と意気込みを述べる。

 ネットスーパー飛躍のカギを握るのは英ネットスーパー企業オカド(Ocado)との協業の取り組みだ。イオンは19年にオカドと提携を結んでおり、千葉県千葉市にネットスーパーの拠点となる「カスタマー・フルフィルメント・センター(CFC)」を稼働させることを発表している。同CFCは23年の稼働予定で、業績に影響してくるのは24年2月期からとみられるが、数千億円ともいわれる巨額投資の成果に注目が集まっている。

 なお、イオンでは23年2月期に単年度で4500~5000億円の投資を計画している(22年2月期実績は3525億円)。投資の対象はオカドとの協業による次世代ネットスーパーのほか、ベトナムでの新規出店やスーパーマーケットの物流センター、セルフレジなどで、内訳は「店舗(日本)」が40%、「店舗(海外)」が30%、「デジタル・物流」が30%になる見通しだ。

 23年2月期の業績予想では、営業収益9兆円(イオンは23年2月期より新収益基準を適用するため前期との比較はなし、旧認識基準では対前期比5.6%増の9兆2000億円を予想)、営業利益は同20.5 ~26.2%増の2100~2200億円、経常利益は同19.7~25.7%増の2000~2100億円、当期純利益は同184.3 ~261.2%増の250~300億円を見込む。

 先行き不透明な状況が続く中、イオンは大幅増益を果たすことができるか。任期3年目となる吉田社長の経営手腕が注目される。