最近話題の「売らない店舗」。いち早く「マルイ」(社名は丸井グループ、東京都)が提唱し、今は一種のブームの様相だが外形だけを模倣されることも多い。では、この「売らない店舗」の本質的な価値とそこから生み出される収益をどのように考えるのか。今号のテーマとする。
「売らなくても良い」店ならスタッフもお客もハードルが下がる
マルイが定期的に発行する共創レポートに、初めて「売らない店舗」が登場した時の説明は驚きだった。
店舗側はお客に売ろうとする。至極、当たり前のことだがお客が買う気も無くフラッと入ったアパレル店舗にも関わらず、横からあれこれ店員に声をかけられ、時には言葉巧みに着せられ挙げ句に買うこともある。ただ、これもお客の選択だし、購買の結果、「良い買い物が出来た」と満足感を得てもらえれば何の問題も無い。むしろハッピーに終わる。しかし、望んでいなかったのに「何となく誘導された」とお客が感じたら後味も悪い。お客もそんな結果をイメージすると、ついお店に入ることをためらうことにもなる。
逆に店舗に入ってきたお客に買わせようと店舗スタッフは接客というプッシュ型の行動に出る。店舗スタッフは「売らなきゃ」「予算達成しなきゃ」と考えれば考えるほどプレッシャーもかかる。
もし、ここに「売らなくてもいい」というオプションがあれば、店舗スタッフのプレッシャーは低減し、お客に思う存分商品説明に時間を費やすこともできる。
お客も買わなくていいと思えば店舗へ入るハードルは下がり店舗スタッフの説明に聞き入ることもできる。
この双方の思いは、売ることを目的に作られた店舗を「売らない店舗」にすることで店舗側とお客、双方のストレスを軽減し、店舗を快適な場所に変え、もっと楽しい場所になるはず。
こんなことが当時の共創レポートに書いてあった。さすがマルイ、面白いことを言うものだと感心した。
売らない店舗がSCにとって「困った存在」である理由
この売らない店舗の考え方は、ユニークだ。だが、元々不動産賃貸業のショッピングセンター(以下、SC)の立場からは微妙である。
まず、
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