多くの食品スーパー(SM)にとって無視できない存在となっているクスリのアオキ。イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)やヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)での勤務を経て、現在はコンサルタントとして活躍する海蔵寺りかこ氏が、生鮮フルライン型の最新店舗を調査。元SM社員として、子育てを経験した主婦としての2つの視点から、強さの根源を分析してもらった。(文中、キャプション内の価格はすべて税別)
ヤオコー時代に体感したアオキの脅威
筆者がクスリのアオキを身近な存在として感じることとなったのは、今から4~5年ほど前、ヤオコーに勤務していたころである。当時の営業企画部門のトップから、「アオキが本気で攻め込んできたら恐ろしいことになる。新しいフォーマットを見て学ぶように」と言われ、すぐに栃木県佐野市に出店した、生鮮も扱うクスリのアオキの店舗を見に行ったのが最初の出合いであった。
佐野エリアはそのときすでに、ヤオコーのほかヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)など有力チェーンがしのぎを削る激戦地。オーバーストア化も進行していて、とにかく競争が熾烈な場所だった。そこにクスリのアオキが進出してきたわけだが、実際にマーケットリサーチをしてみると思った以上に脅威的な存在であることを認識させられた。最も印象的だったのは価格の安さだ。食品スーパー(SM)ではまず不可能な値付けを食品で行っていたことに驚いたのを思い出す。
実際に周辺のSMへの影響は大きく、最も至近にあったヨークベニマルの店舗からは当時明らかにお客が流出していたのが見て取れた。同店よりも少し離れたところにあったヤオコーの店舗も多少なりとも影響を受けることとなった。
もっとも、生鮮についてはコンセッショナリー(コンセ)による運営で、周囲には「(コンセの出店が前提になるから)生鮮導入型のフォーマットの出店は続かないだろう」といった見方もあった。その正否は別として、筆者としてはクスリのアオキがその後、食品というカテゴリーとどのように向き合っていくのかに強い関心を持っていた。それから数年を経て今回、クスリのアオキの生鮮フルライン型店舗を見て回ったのだが、「食品のMD(販売施策)を含め、クスリのアオキの店づくりはまったく新しいステージに移行している」というのが素直に抱いた感想である。
「隣のSM」を買収し、生鮮フルライン型店舗に
今回
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