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店内調理、冷凍食品で突き抜ける! ローソンのアフターコロナ戦略

 初の緊急事態宣言発令から2年近くが経過し、コロナ禍も3年目に突入しようとしている。コロナ禍が逆風となっているコンビニ各社では、従来と異なる施策で風向きを変える必要性があると、いよいよ強く感じているところだろう。こうしたなか今回は、ローソンが強力に推進している売場と商品改革にクローズアップしたい。

ローソンはコロナ禍で売場と商品改革を強力に推進している

グループ横断で
全社改革を推進

 コンビニ大手3社のなかでもローソンは、アフターコロナを見据えた「新しいコンビニの実現」をめざし、対外的にも全社改革を打ちだしさまざまな手を打ってきた。
2020年10月にはグループ横断組織「ローソングループ大変革実行委員会」を始動。12のプロジェクトを立ち上げ、「売場」「商品」「SDGs」「データ活用」「収益力向上」などさまざまな分野に関する改革を進めている。

 なかでもスピーディな改革が目にとまるのが「店舗理想形追求プロジェクト」だ。ローソンはコロナ禍で伸長している商品カテゴリーに、冷凍食品や、店内調理品「まちかど厨房」、チルド総菜、スイーツ、常温和洋菓子などを挙げる。同プロジェクトでは、これらの商品群がより購入される売場へと、店舗を改装する実験を行っている。

ローソンが実験する
“理想形の店舗モデル”

 たとえば「まちかど厨房」は、出入口から入って突き当り正面、中食商品売場の中央に配置。冷凍食品については、売場を従来の1.5~2倍に拡大。取り扱う商品も約2倍の110品に拡充する。好調カテゴリーの売場での視認性を向上させ、また買い合わせを促して、客単価を上げることが大きなねらいと見られる。こうした売場づくりで、日々の食事の買い場としての存在感を高めていきたい考えだ。

 ローソンはこの改装モデルを2021年上期で800店舗に導入。2021年度中に約5000店舗まで広げる予定だ。改装実施店舗では約5~10%の売上改善効果が出ているという。

ローソンは、ファストフードや「まちかど厨房」といった出来たての即食商品を戦略的に売り込んでいくとみられる

全国約8000店に
導入済みの武器

 筆者はローソンの改装モデルからは、とくにファストフードや「まちかど厨房」といった出来たての即食商品を戦略的に売り込んでいきたいねらいを感じた。ファストフードにはセルフ販売什器も導入しており、従業員の作業負担を軽減し、そのぶん店内調理に人時を充てていくと考える。

 同社は1月27日に、店内厨房を活用した宅配調理事業「ゴーストレストラン」事業への参入も発表した。今後は、すでに全国約8000店に導入済の店内厨房を他社の差別化を図る武器として、店舗とデリバリー対応で売上獲得を図ると見られる。

改装モデル店には、ファストフードのセルフ販売什器も導入する

冷凍食品の売上を
25年度までに5倍へ

 「売場」とともに「商品」においても改革が進んでいる。なかでも冷凍食品は、ローソンにおいても売上高伸長率がここ5年で2倍以上と、トップクラスで伸長するカテゴリーとして、戦略的に販売を強化する。25年度までに20年度対比売上高を5倍に伸ばすと、かなりハードな目標まで発表した。

  背景としては、現在コンビ二の売場ではオープンケースに並ぶチルド商品が主力だが、この売上高構成比がある程度の割合で、冷凍食品にシフトすると想定しているではないだろうか。たしかに冷凍食品の技術の進化は目まぐるしく、食品小売各社でも年々売場が広がっている。冷蔵庫にストックする、すぐ食べるという双方の需要が期待でき、フードロス削減効果も見込める。

ローソンは25年度までに冷凍食品の売上高を20年度対比で5倍に伸ばしたい考えだ

コンビニで冷凍食品が
伸びている理由

 2000年代にはコンビニの冷凍食品といえば、ロックアイスや鍋焼きうどんぐらいだった。それがなぜここまで購入される商品になったのか。これには、冷凍食品とコンビニに消費者が求めるニーズがマッチしているからだと私は考えている。

 女性の社会進出による共働き世帯の増加、核家族化や高齢化社会など、コンビニは社会構造の変化で生じる新しいニーズに対応し成長してきた。冷凍食品もまさに、それらの環境変化に即した商品として消費量が広がっている商品と言える。

冷凍弁当やホットスイーツ・・・
新しいカテゴリーを開拓

幅広いカテゴリーの冷凍食品を提案する

 では、ローソンは野心的な冷凍食品の売上高目標をいかに達成しようとしているのか。具体的には「カテゴリーの拡大」「定番品の改良」「新しい即食ニーズへの対応」の3つにチャレンジしていくという。

 特筆したいのは、カテゴリーの幅広さと、その品質だ。

 冷凍庫から出してすぐに食べられることをコンセプトにした冷凍デザートでは「4種のマカロン」や「フォンダンショコラ」を、冷凍ベーカリーでは、ローソンの健康志向消費の看板とも言える、ブランを使用したパンの「ブランのクロワッサン」や「ブランのイングリッシュマフィン」などを発売している。そのほか、冷凍ラーメンや冷凍弁当にも力をいれていくようだ。

 とくにユニークだと感じたのは冷凍デザートだ。これまでのコンビニのスイーツと言えば、冷たい温度帯の商品ばかりだが、レンジアップして楽しむ「ホット・スイーツ」カテゴリーには潜在的なニーズがあるのではないだろうか。「フォンダンショコラ」は、冷凍食品とは思えない美味しさだった。

「フォンダンショコラ」

 ローソン以外にも、「セブン-イレブン」では冷食売場の拡大した新レイアウトの導入を推進。「ファミリーマート」が複数展開してきたPBを統合した新ブランド「ファミマル」でも、冷凍食品が戦略の重要な要となっている。大手コンビニ3社の売場改革、商品開発からは今後も目が離せない。

【執筆者】

田矢信二(たや・しんじ)

近畿大学商経学部卒業。幼少期は実家の小さなおもちゃ屋で商売を学ぶ。その後、セブン-イレブン・ジャパン、ローソンを経て、コンサルタント会社でも勤務。コンビニの商品や売場全般に詳しく、お店に訪れ消費者目線で買い物して試食する毎日。本部社員として働いた現場経験を活かし、コンビニに関する講演・セミナーからテレビ・ラジオ番組などにも出演。コンビニをテーマにした記事への取材なども。アジア企業へのコンビニをテーマにした企業講演の実績も多数。主な著書に『セブン-イレブンで働くとどうして「売れる人」になれるんですか?』『ローソン流アルバイトが「商売人」に育つ勉強会』(以上、トランスワールドジャパン)がある