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モノタロウ21年12月期決算は20%の売上・営業利益増 22年の営業増益が2%にとどまる理由は

製造・建築現場などで使う間接資材のECサイトを運営するMonotaRO(モノタロウ)(:兵庫県/鈴木雅哉社長)が2月7日、2021年12月期決算会見を行った。事業者」向けネット通販事業・販売管理システム事業が好調で増収、増益を記録した。

決算会見を行うモノタロウの(左から)鈴木雅哉社長、甲田哲也執行役員

増収増益、大企業からの受注好調

モノタロウの2021年12月期決算は、単体ベースで売上高1824億7200万円(対前期比20.2%増)、営業利益245億3300万円(同21.8%増)、当期純利益177億100万円(同34.7%増)だった。同社鈴木社長は増収増益の要因を「20年の『反動』で、事業者向けの売上(事業者向けネット通販事業・大企業向け購買システム管理事業)が好調だった」と説明する。投資フェーズが続く海外子会社の業績を合わせた連結ベースでも、売上高1897億3100万円(同20.6%増)、営業利益241億2900万円(同23.1%増)で増収増益だった。

20年はコロナ感染拡大に伴い、一般消費者のマスクや消毒液などへの需要が急増。事業者向け売上の落ち込みをカバーした。21年度は感染予防商品の売上は落ち込んだが、従前からの顧客である大手製造業の注文単価、顧客数ともに増加。特に、大企業向けに間接資材の検索、比較から発注、決済までをワンストップで行う「購買管理システム事業」の売上高は対前年比42.9%増の359億8100万円と大幅な伸びを示した。事業者向けネット通販、購買管理情報システム事業の口座数は合わせて前年から127万口座上乗せし、21年12月末時点で677万口座を記録した。

鈴木社長によると、日本における間接資材の市場規模は約5~8兆円。市場内の約30~40%の客が一度はモノタロウを利用したことがあり、顧客内シェア(顧客が購入した特定の商品群の購入金額に対する自社サービスの割合)は約10%。既に工具EC事業者としては最大手だ。

「当社は1800万点強の間接資材の商品を取り扱っていて、あらゆる産業のあらゆるお仕事に従事される方々が原材料以外の商品を調達できる点が強みだ。創業(2000年)から約15年間は、顧客数が限られており、使用確率の低い商品を取りそろえることは難しかった。だが、近年は顧客基盤の広がりと同時に在庫点数も増えてきた。現在は間接資材をトータルで購入した際、他社よりも圧倒的に安価に全てを揃えることができる」(モノタロウ・鈴木社長)

インド事業はサプライチェーン分断影響も韓国事業好調

モノタロウは子会社を通じて韓国(NAVIMRO社:出資比率100%)、インドネシア(MONOTARO INDONESIA社:出資比率51%)、インド(IB MONOTARO社:出資比率50%)でも事業を展開している。

このうちNAVIMRO社は22年12月期の売上高が66億4000万円(対前期比29.1%増)、営業利益1億6000万円(同59.7%増)と好調。取扱商品、在庫商品を拡大した成果が表れた。MONOTARO INDONESIA社は売上高3億9000万円(同6.2%)、営業利益は2億6000万円の赤字を計上。損失は計画内(21年度計画は3億円の営業赤字)だった。これは20年度に新型コロナウイルス感染拡大に伴い売上が落ち込んだことと、16年10月に同事業を開始したため、21年度も先行投資期間内であったからだ。21年1月から事業を開始したIB MONOTARO社は、サプライチェーン分断の影響を受け、売上高は4億2000万円の計画に対して実績は3億1000万円と未達だった。しかし、鈴木社長は「インドは大きな市場であり、将来性がある。現地で必要とされる物流モデルにアジャストしたい」と意気込む。

22年は猪名川新DC稼働、サービスのパーソナライズ化にも取り組む

2022年12月期の事業計画で目玉となるのが、関西エリアの物流拠点を現在の尼崎DC(ディストリビューション・センター)から、兵庫県河辺郡の猪名川DCに移管し、4月から稼働させることだ。23年第2四半期にはフル稼働させる予定で、尼崎DCの在庫能力25万SKUから、60万SKUまで増強する。

22年12月期通期(連結ベース)の見通しは売上高が2165億500万円(対前年同期比18.7%増)、営業利益が250億1800万円(同2%増)としている。営業利益の伸びがわずか2%にとどまる理由として、販売管理費を対前年比31.6%増の368億4800万円を見込むことが挙げられる。その内大部分を、尼崎DCから猪名川DCへ機能を移転することによる20億8300万円の一時コスト(尼崎DC設備の減価償却費、同DCバックヤードの設備賃借料等)が占める。

鈴木社長は一時コストついて「猪名川DCへの移転に際して、尼崎DCやその周辺施設の原状回復費用を新たに計上する必要がでてきた(約3億5000万円)。また、猪名川DCのスムーズな稼働に際して、継続して稼働する尼崎DCの設備を賃借する必要がある(約10億7700万円)」と説明する。22年度、猪名川DCで発生する物流関連コストは、一時コストと合わせて売上比8%の172億9100万円。同DCでも、24年度には21年4月に開設した茨城中央SC(サテライトセンター)の実績である物流関連コスト対売上比6.5%を下回ることを目指す。

事業計画としては、大企業連携の販売管理システム事業の連携企業数、口座当たり利用拡大、同事業の売上高前年比36%増を目指す。既に本社兵庫県以外に、東京都、愛知県名古屋市で顧客の産業別に営業チームを配置するなど、21年度の成長ドライバーであった大企業向け販売管理システム事業のさらなる発展を狙う。事業者向けネット通販、大企業向け販売管理システム事業を合わせて、新規を131万(21年度は127万)獲得する予定だ。

また、同社鈴木社長は、既存顧客の利用増のために「サービスのパーソナライズ化」を手掛けると意気込む。お客の過去の注文履歴、産業セグメントから適正な商品をレコメンドし、リアルタイムでの表示に取り組む。そのことで、お客が「商品を見つける時間」の短縮を目論んでいる。

サプライチェーンを高度化する新たなITプラットフォームの①受発注管理システム(Order Management System)②商品情報管理システム(Product Information Management)も22年1月から導入する。①には配送ルート最適化機能とオペレーション負荷標準化機能が搭載されていて、22年12月期には配送関連費用売上比0.1%減(対前年比)の効果を見込む。お客が「商品を待つ時間」を短縮し、同社が負担する配送コストを低減する。②顧客の購入履歴やセグメントに合わせて適切な商品のレコメンドを可能にする管理システムだ。

ネットを主戦場に、間接資材のECというブルーオーシャンを開拓したモノタロウ。22年度も新DC建設、新ITプラットフォーム導入で、更なる成長を目指す。

「当社の競合はECサイトではなく、オフラインであるリアル店舗。コロナ禍でリモートワークが浸透し、顧客の購買行動そのものが変化する中でも。オンラインビジネスを続けてきた経験を活かしていきたい」(モノタロウ・鈴木社長)