メニュー

ちょい吞み屋「吉野家」

 中島みゆきさんの楽曲『狼になりたい』にも登場するように「牛丼の吉野家」で飲んだことがある人は少なくないだろう。

 酒は瓶ビールか瓶入り1合酒。つまみは肉皿だ。

 難点は、アルコール類は1人3本までと制限が入っていることだ。

 とくに財布が寒かった社会人になりたての頃は、2000円もあれば酔えて、お腹も膨れることもあり、仲間と吉野家で上司の悪口を言い、将来を語り合ったものだ。

 

 その吉野家がちょい吞みのできる「吉吞み」をスタートさせたことをご存じだろうか?

 コンセプトは、「新しいちょい吞みの場」。ターゲットとするのは会社帰りのサラリーマン。加えて、「1人」「カップル」「グループ」…一杯ひっかけてから帰宅したい人たちみんなだ。

 既存店舗の2毛作形式(昼は牛丼、夜はちょい吞み)が主流で、店内にはカウンターのみならずテーブル席を用意。また、喫煙室を設けて分煙体制も整えている。

 

 メニューは実に豊富だ。

 瓶ビール(350円)、生ビール(300円:キャンペーン価格)、角ハイボール(350円)、梅酒(350円)、カシスウーロン(ソーダ)(350円)、ホッピーセット(400円)、焼酎〈芋〉〈麦〉(水割り、お茶割り、ウーロン茶割り:各300円)、冷酒(340円)。ソフトドリンクとしては、お茶(120円)、ウーロン茶(120円)もある。

 

 つまみは、牛皿(並)(250円)、牛カルビ皿(並)(400円)、鰻皿(630円)、ロース豚皿(400円)、牛すじ煮込み(350円)、牛すい(350円)、お新香(100円)、キムチ(100円)など従来から連続性のあるメーン商材は当然のこと。

 

 まぐろ刺身(300円)、子持ちししゃも(350円)、焼きいか(300円)などの海鮮類。メンチカツ(350円)、フライドポテト(200円)、骨付フライドチキン(250円)、海老フリッター(210円)などの揚げ物。酒の肴としては、ウインナー(250円)、ハムポテト(250円)、玉子焼(200円)、たっぷり野菜(200円)、一口がんも(200円)、枝豆(150円)、冷奴(150円)、コーン(160円)などを取りそろえる(※店舗によってメニュー、価格は異なる)。

 

 11月14日現在、展開しているのは仙台広瀬通り店(宮城県)、所沢駅前店(埼玉県)、JR神田駅店(東京都)、西五反田一丁目店(東京都)、東京駅八重洲通り店(東京都)、調布駅前店(東京都)、三軒茶屋店(東京都)、西新橋店(東京都)、大塚店(東京都)、新大橋通り八丁堀店(東京都)、中目黒駅前店(東京都)、小田急町田駅南口店(東京都)、千種駅前店(愛知県)、十三店(大阪府)、東三国店(大阪府)、肥後橋店(大阪府)、小倉京町店(福岡県)、熊本上通り店(熊本県)の18店舗。なお、営業時間は17時~22時30分(店舗によって異なる)。

 

 外食産業業界は現在、大きな転換期を迎えている。

 

「デフレの勝者」と言われた日本マクドナルドホールディングス(東京都/サラ・エル・カサノバ社長)は、7月に発生した期限切れの中国製鶏肉を使用していた問題の影響で、既存店舗が大きく落ち込み、2014年度決算(通期)では、売上高2210億円(対前期比15.1%減)、営業損益94億円の赤字、経常損益107億円の赤字、最終損益170億円の赤字と上場以来初の営業赤字転落予想を発表した。

 

 また、業界売上高1位で「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス(東京都/小川賢太郎社長)は、2014年度の最終損益を75億円の赤字と発表。従業員不足にともない一時営業休止の店舗が生じ、既存店舗の売上が減少したことが主因。牛肉など原材料の高騰も一因となっている。

 

 一方、傘下に「吉野家」のほか、「はなまる」(うどん)、「どん」(ステーキハウス)、「京樽」(すし)などを抱え、本稿の主役である吉野家ホールディングス(東京都/河村泰貴社長)は上昇トレンドだ。2014年度(通期)は、売上高1750億円(対前期比0.9%増)、営業利益33億円(同51.4%増)、経常利益37億円(同13.1%増)、当期純利益10億円(同43.3%増)を予想する。

 

 少子高齢化・人口減少、原価高騰に加え、内食回帰、中食ブーム、飲酒人口減少と逆風が吹き荒れる外食市場にあって、小さな投資額で新しい需要の開拓を仕掛ける「吉吞み」――。

 最近、とっても気になるビジネスモデルであり、リアル店舗を持つチェーンであればアイデアを転用することは可能なはずだとも思う。