全国にキッズ・ベビー用品販売の専門店「西松屋」などを864店舗展開する西松屋チェーン(兵庫県/大村禎史社長)の製造小売業化にますます拍車が掛かっている。
「これまで企画‐生産‐物流‐販売の社内体制を構築すべく、製造業から一流の技術者をスカウトしてきた。すでに60人の技術者が商品開発担当として働いている」と相好を崩すのは大村社長だ。
ヒット商品も続々と誕生している。
「ベビーバギー」(2999円)、「ロングユースベビーバギー」(6999円)、「三輪車」(2999円)、「押し手付き三輪車」(5879円)、「ベビーチェアー」(798円)、「ハイチェアー」(3499円)、「バウンサー」(5979円)、「乗用玩具」(2779円)…。
また、プラスチック成形商品にも注力し、「くみあわせマット」(489円)、「くみあわせマット(大判)」(879円)、「キッズハンガー(12本組)」(259円)、オマル(1479円)、「座れるおもちゃ箱」(1799円)、「ポケットエプロン」(499円)、「ベビーバス」(999円)、「補助便座」(999円)…こちらもヒット連発だ。
さらには、ファブリック(繊維)関係の本格的PB(プライベートブランド)の開発にも乗り出しており、その渾身の企画商品として登場したのが、「掛布団(厚手)」「掛布団(薄手)」「掛布団カバー」「敷布団」「フィッティングシーツ」「汗取りパット」「枕」「枕カバー」「枕用汗取りパット」「洗濯ネット」の10点からなる「カバーリング組布団10点セット のんびりクマ」(8999円)だ。
着々と製造小売業化を進める西松屋チェーンは、今後の重点政策として、
① 低価格政策の徹底
② 在庫管理の適正化
③ SKU数の削減
④ 売れ筋商品の追加生産体制確立
⑤ 発注~納品のリードタイム短縮
⑥ グローバルなソーシングルートの開発
を挙げている。
とくに⑥の実現に当たっては、総合商社の勤務者をスカウトしており、こちらも社内に20人を数えるようになった。
中期経営計画である2019年2月期の目標として「売上高2000億円、経常利益230億円、店舗数1000店」を掲げている。
中でも注目したいのは、インターネット通販の取り組みである。
同社は、売上高の6%、すなわち120億円を5年後の売上目標に据えている。
2014年2月期末時点のネット通販の売上高は、12億8000万円。内訳は、「楽天 ICHIBA」の店舗が11億円、ベネッセコーポレーションが展開する「ウィメンズモール」が1億8000万円だった。
ところが、2014年3月末にウィメンズモールは閉鎖。これを受け、この6月5日から「DeNA SHOPPING」への出店を開始した。「売上は1日35万円くらい。年商1億2000万~1億5000万円で落ち着きそう」(同社幹部)という業績で推移している。
さらに2014年9月1日からは、DeNAの協力体制のもと、「西松屋公式通販サイト」を立ち上げた。
http://www.dena-ec.com/nishimatsuya/?e=ds_head_nsm
「1日60万~80万円とウィメンズモール内の店舗よりも売上増加が図られたが、予算は対前期比40%増で組んでいるけれども8%しか上がっていない」と大村社長は不満顔だ。
しかも、2014年2月期末時点では、ネット通販はまだ経常赤字事業の域を出ていない。
「粉ミルクや紙オムツなどの重くてかさばるナショナルブランド(NB)が売れ筋であり、これらの構成率が高いので、どうしても粗利益率は低くなってしまう」(同社幹部)。
そうした理由からも同社が注力の姿勢を示しているのは、製造小売業の肝というべきPB開発だ。
「ネット通販だからこそPB開発が大事だ。実際にユニクロや良品計画のようなネット通販の勝ち組企業の共通項は、PBを安定供給できる体制を構築していること。その意味から言っても、PB開発にはさらにアクセルを踏み込まなければならない」(大村社長)。
同社は2015年2月期にネット通販による売上高を18億円に増やし、2016年2月期32億円、2017年2月期50億円を計画する。
なおこれと平行して、消費者の玄関までいかに運ぶかという、「ラストワンマイル」物流の体制づくりにも着手する。
西松屋チェーンの2015年2月期第2四半期の業績は、売上高634億7500万円(対前期比2%増)、営業利益22億7700万円(同3.7%減)、経常利益23億7300万円(同4.9%減)、四半期純利益15億3900万円(同19.6%増)。通期見通しは、順に1324億1800万円(同3.7%増)、59億5000万円(同11.7%増)、61億4200万円(同10%増)、34億5600万円(同15.5%増)と発表している。