2月14日、楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)は2013年12月期決算を発表した。
売上収益は、5185億6800万円(対前期比29.5%増)、営業利益902億4400万円(同80.3%増)、税引前利益886億1000万円(同80.4%増)と大幅増収大幅増益だった。
「楽天市場・楽天トラベル」事業の売上収益は1720億円(同18.8%増)、営業利益(一過性要因控除後)は869億円(同12.1%増)。「その他インターネットサービス」事業の売上収益は、1443億円(同14.1%増)、営業利益(同)は、323億円の赤字。「インターネット金融セグメント」事業の売上収益は2015億円(同59.2%増)、営業利益は442億円(同117.8%増)。「その他セグメント」事業の売上収益は357億円(同7.4%増)、営業利益は38億円(同33.2%増)だった。
決算の注目ポイントは、
① 国内のEC(電子商取引)流通総額が対前期比19.8%増の1兆7335億円
② 営業利益(一過性要因控除後)は974億円(対前期比22.1%増)
③ 1株当たり配当金4円(同1円増)
の3点である。
さて、野心的に事業を拡大してきた楽天の拡大意欲はいまだやまず、VIKI(160以上の言語に翻訳された、テレビ番組、映画などの上質なコンテンツを世界各国に提供する動画配信サイトを運営)やKobo(電子ブックリーダーと電子書籍を販売する企業)の買収に加え、決算発表当日には、モバイルメッセージングとボイスオブIPサービスのViber Media Ltd.(以下、バイバー)を9億ドルで買収すると発表した。これにより、通話アプリ「バイバー」の3億人のユーザーが楽天の2億人のユーザーに加わることになる。
様々な企業を買収し業容を拡大する楽天ではあるが、その一方、オペレーション面では非効率な部分があったという。
そこで立ち上げたのがコスト削減・最適化を意図する「プロジェクトV4」だ。
「プロジェクトV4」は、別名KKP(ケチケチプロジェクト)。4つの項目から構成される。
ひとつめは費用の最適化だ。交通費や出張費を含む、着手しやすいところから始め、様々な費用構造の見直しを実施して、削減や効率化を図っていく。
2つめは、Eコマースのプラットフォーム共通化だ。楽天は、過去に多くのマーケットプレイスを買収してきたが、それぞれ異なるプラットフォームで動いていた。これを「楽天 マーチャント グローバルサーバ」に一本化。タイやEU、アメリカなどの異なったプラットフォームをすべて統一化する。
同時にマーケットプレイスのモデルの見直しも図り、本社の人員数削減にも努める。
3つめは、スモールチームだ。たとえば楽天スマートペイは、現在、月ごとに50~60%の伸長を遂げているが、専任チームの人員はわずか5人。なるべく小さなチームで機動的に運営する。
4つめは、経営陣の刷新も辞さないビジネスの再編だ。
すでに打ち手は施しており、赤字が続くカナダのKoboには、フュージョン・コミュニケーションズの業績回復に貢献した相木孝仁氏をCEO(最高経営責任者)として着任させた。「年間あたり20億円前後の損失を出していたが、彼の手法によって、20億円近い営業利益を生むところまで好転させたい」(三木谷氏)。
また、結婚相談所のオーネットを4年間率いてきた島貫慶太氏を上級執行役員物流事業 副担当役員に据えた。
「強い専門知識とリーダーシップを持つ2人は、『プロジェクトV4』の要になると確信している」(三木谷氏)。
なお、プロジェクトV4の目標は毎月10億円、年間120億円の営業費用削減だ。
楽天は、ビジネスの範囲を拡大し、グローバル化を進め、事業や売上拡大に専心している。
ただそれだけでは健全な企業経営とは言えないと自戒し、「プロジェクトV4」は、同時に経費コントロールにも目を光らせるというもの。三木谷氏肝いりのプロジェクトの行方に注目したい。