我々のテニスの試合は、ほぼすべてがセルフジャッジによって進められていく。
セルフジャッジ――。
つまり審判は不在で、プレイヤー同士で判定し合うというものである。
しかしプロの審判でさえもがよく間違い、《ホークアイ》というシステムを導入しているテニスのジャッジを、素人が行うのだからミスは非常に多い。
だから、紳士淑女のマナーとして、「“灰色”の場合には相手が有利になるように判定する」という不文律があるほどだ。
ただし、そんな不文律を順守したとしても、まだたくさん間違う。
自分では、インとした判定がアウトだったり、アウトと判定したものがインだったりということは日常茶飯事だ。3セットも試合をすれば、1回くらいは必ず起こってしまう。
どうしてこんなことが頻繁に起こってしまうのかと言えば、主因はプレイヤーの立ち位置にある。
ジャッジの基本は、ボールに一番近いプレイヤーが判定するというものだが、そのプレイヤーの位置取りによって見え方が異なるからである。ポジションによっては、本当にアウトがインにインがアウトに見える。
競馬中継でカメラに角度がついていると、接戦の際には、どちらが1位なのか分からないのと同じ。相撲中継なら、カメラの設置位置によって、どちらが先に土俵を割ったか分からないのと同じである。
そして、そんなことを考えながら確信したのは、何事も、公正なジャッジをするに当たっては立ち位置がとても大事であるということだ。