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「フェイスブック」を見直す

 どんなに長い時間をかけて付き合ったとしても、他人のすべてを知ることは難しい。

 

 1日8時間、1週間では40時間、フェイストゥフェイスで膝を詰め合って会話を交わしている職場や学校などの同僚はよい例だろう。

 

 家族よりも過ごす時間が多いにもかかわらず、実はその人生の詳細については、ほとんどを知らない。個人情報保護法が施行された現在であれば、以前との比較では、知る部分はさらに少なくなっているはずだ。

 思いがけず結婚式や定年式に招かれ、プロフィールが紹介されるうちに、全く知らなかった姿を見せられて、「ああ、こういう側面もあったのか」と驚かされたことは10指では収まらない。

 

 しかしよく考えてみると、両親や兄弟姉妹といった血縁関係者であっても状況はそんなに変わらない。

 十数年間にわたって寝食をともにし、いろいろな話をして面倒をみたりみられたりしてきたにもかかわらず、分かっているのは知っていることだけ。

 勤め先での父親、フリーの時間の母親、兄弟姉妹の交友関係…我に返ってみれば、何も知らない自分に呆然とする。

 

 そんな事実を踏まえ、反省した上で、改めて感心させられるのが「フェイスブック」である。

 その人のアップデートした写真やコメントを追っていけば、趣味、嗜好、興味、人脈、さらには、現在何をしているのかまで、手に取るようにわかる。普段のビジネスの場では見られない横顔を垣間見ることができ、その人を知る上でとても有効だったりする。

 オタクの片鱗も見せていなかった人がガンプラやアイドルマニアだったり、大人しそうな人がロックバンドのボーカルでギンギンに歌っていたり、いつもぶすっとしている人が毎日愛情こもった料理をつくっていたり、と意外性があって本当に面白い。

 

 円柱は上から見れば「円」だが、横から見れば「長方形」、斜めから見れば「円柱」であるという当たり前のことを改めて教えてもらっているような気がする。

 

 まあ、だからと言って、フェイストゥフェイスの交流が最も大事という持論に変わりはない。

 

 とはいうものの、IT技術やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を介した交友関係というのも馬鹿にしたものではないと思う。