洋の東西を問わず、太古の昔から、権力者は、自分を否定する思想や伝承者を力づくで捻りつぶしてきた。
その代表的な例は、秦の始皇帝だ。
始皇帝が行った思想弾圧「焚書・坑儒(ふんしょ・こうじゅ)」は愚政としていまなお、その名を後世に残している。
紀元前213年、民間にあった医薬、占術、農業などの実用書以外の書物を焼き捨て、翌212年には、始皇帝に批判的な学者約460人を坑(あな)に埋めて殺してしまったのだ。
しかし、そのことによって、燃やしたはずの『書経』『詩経』『諸子百家』といった書物が地上から消滅することはなかった。もちろん、儒家思想も死滅しなかった。2300年を経過したいまだに厳然と存在している。
権力者が鬱陶しい、と嫌う思想や芸術などは、いつの時代にも存在する。しかし、力づくでつぶそうとしても、どうにもならないことを歴史は証明している。
思想や漫画を含む書物、音楽、映像、演劇などに真っ向から対抗できるのは、権力ではなく、代替えとなる別の思想や漫画を含む書物、音楽、映像、演劇などでしかないと思う。