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エブリデー・ロー・コスト(EDLC)の意識が半端ではない

 以前、このBLOGで『ウォルマートの成功哲学 企業カルチャーの力』(著:ドン・ソーダクイスト、訳:徳岡晃一郎/金山亮:1800円)という単行本を紹介した。

 

 その各所に、「ウォルマートの従業員は、エブリデー・ロー・プライス(EDLP)を具現化するためのエブリデー・ロー・コスト(EDLC)の意識が半端ではない」という話が出てくる。

 

 たとえば、ウォルマートでは、役員といえども、出張する際には高級ホテルに宿泊するのではなく、「ラ・キンタ・イン」や「モーテル6」のような清潔で値段的にも程々のホテルを利用するのだという。宿泊先では同性の同行者との相部屋が基本だ。

 部下や同僚と同室に泊まり、ともに語り合い、情報交換しながら、一夜を過ごす――。

 それがウォルマートの企業カルチャー伝承に貢献している、と記されていた。

 

 この項を一読しながら、私は、こうした本にありがちな、事実を大げさに描いたエピソードだと懐疑的に捉えていた。

 

 しかし、ベントンビルのホテルをチェックアウトする前に、この記述が本当であると確信する事件に出くわした。

 

 ホテルの宿泊とセット料金になっている朝食をレストランで食べていると、どこかで見た男が向こうからやってきた。

 プレスや株主へのプレゼンテーションで2度お会いしたグローバル・eコマース事業のニール・アッシュCEO(最高経営責任者)だった。

 時刻は6時25分。洗いざらしのポロシャツにチノパンという出で立ちで、ビュッフェからオートミールとバナナを取り、左手でスプーンを使って食べていた。

 

 アッシュさんは、1人だったので、前の晩が相部屋だったのかどうかは知る由もないが、売上高44兆円企業の役員が記者の使うような「清潔で値段はそこそこ」のホテルに泊まっていることは事実だった。

 

 急いでいた様子だったので、アッシュさんに声をかけようかどうか逡巡していたら、6時40分、早々にホテルを後にしていった。