決算発表シーズンたけなわである。そこで今日は、インベスターリレーション(IR)について思い出した話を記しておきたい。
かつて日本の小売業のあるIR担当者は、スモールミーティングにおいて英国の女性に聞かれた。
「あなたの会社はどんなお客がメインでどんな対応をしているのか? 現在の戦略課題は何か?」。
経営数字について聞かれると思っていただけに不意を突かれたような気分になった。
もちろん細かな数字に関する質問もあったが、むしろそれは付け足しのような感じだった。
なぜ、彼女が一見、あべこべのような順番で質問をしたのだろうか?
聞けば、彼女はある年金の運用責任者であり、彼の企業を長期的に信頼していいのかどうかを確認したかったからだという。
そこでIR担当者は改めて気づかされた。
「我々に投資されている資金は、年金生活者などの方々からお預かりしている大切なお金なのだ」。
「経営は数字で表現される。しかし、数字はいろいろ加工されてしまう。だから、企業の顔が見えるようにして、その数字を生み出す過程を信頼してもらうことがIRの要諦だ」と彼は確信した。
「現代経営は、即効性のあるものが優先されてしまう傾向があるけれども、たとえ時間がかかったとしても企業とは、土台づくりこそが重要であり、その部分を投資家の方に理解してもらう必要がある。だからこそ、継続的なIR活動をしなければいけない」という境地に至った。