出版業界に身を置きながら、この1年余り、頻繁には新刊本を買わなくなった。
定期購読をしているビジネス雑誌は読むが、単行本の購入は月に平均2冊ほどになっている。
なぜなのかと言えば、過去に読んだ本を自分が消化しきれているのか、と自問するようになったからだ。
たとえば、書棚から埃をかぶった本をふいに取り出し、開いてみる。
ああ、人間の記憶力の悲しさ――。
ほとんどのことは忘れてしまっている。もっと言うなら、何も覚えていない。
ただ、だからと言って読書が無意味であるとはまったく思わない。
過去に読んだものは、大脳を初めとする私の身体のどこかに知らず知らずのうちに入り込んでいるはずだからである。
けれども、内容をすっかり忘れているのであれば、再度読み直すことが重要だ。
遠い記憶をたどって、読後感の良かったものを再読する方が、年間8万点弱が発行されている新刊に闇雲に飛びつくよりも意味があるような気がする。
幸いなことに、私の読書の仕方は、蛍光ペンなどを片手に学びたいところに線を引いていくというものなので、ペン跡を追うことだけに集中するのであれば、相当な飛ばし読みが可能であり、ヒマな日であれば1日で3冊くらいのスピードで読むことができる。
せっかちな私にとって、ぴったりの読書法だと自画自賛したい。
そうそう。副産物として、ちょっとした小遣いの節約も期待できる。