次に、我々がグローバルで何をしていくのかについて話したい。
今後のグローバルの基本戦略として、ファッションリーダーシップとプライスリーダーシップ(安い)をとりたい。
アメリカでの展開については、9月28日にニュージャージー州のショッピングモールに出店した。全米最大級のショッピングモール「Westfield GARDEN STATE PLAZA」に売場面積1000坪のユニクロを出店したものだ。いままで日本でもショッピングモール内には売り場面積1000坪の店舗を出店したことはないが、ここでは大変な勢いで売れている。
10月5日には、サンフランシスコにフラッグシップストアを開業した。初の米国西海岸への進出であり、ケーブルカーが出発するユニオンスクエアの近所のパウエルストリートで最高の立地。オープン初日には1000人の客が行列するほどの大盛況をみせた。
今回の大発見は、西海岸には大きなビジネスチャンスがあると確信したことだ。なぜなら、アメリカの中にあるアジアを感じたからだ。西海岸は、中国人、インド人、ベトナム人、韓国人などのアジア人が非常に多く、生活水準や文化度がとても高い。
そして、我々アジアのブランドに対しての親和感があるので、今後、大量出店できる可能性があると考えた。
ユニクロのアメリカでの拡大戦略については、売上拡大と経営効率化による事業の黒字化を早急に図りたい。今期は無理かもしれないが、来期には黒字化し収益があがる事業にする。
その実現に向けて、経営チーム、店長育成のさらなる強化も進める。
ニューヨーク市、サンフランシスコ市の市内・郊外で30店舗ずつ出店しドミナント化を図る。我々はグローバルでの知名度、全米での知名度、ニューヨークでの知名度があがったのでモールへの出店要請を良い条件でもらえるようになった。デベロッパーには歓迎されている。だからアメリカ全土への大量出店が可能だと踏んでいる。
加えて、グローバルにインターネット販売をスタートさせる。サンフランシスコに拠点を構え、インフラづくりに努めたい。
ヨーロッパでの拡大戦略については、非常に優秀な新CEO(最高経営責任者)のもと、イギリス、フランス、ロシアの経営を統合して、経営陣の強化を図っていきたい。
イギリスはスクラップ&ビルドにより、ロンドン市内の大型店を中心に事業を再構築し、展開し、フランスはパリを中心にチェーン展開していく。
さらにヨーロッパの大都市、ベルリン、ミラノ、バルセロナへの進出も検討中だ。ユニクロをヨーロッパの主要都市に出店していく。
グローバルブランドのセオリー事業は、2012年8月期は過去最高の営業利益を達成した。
日本では「theory」「theory luxe」が百貨店で好調に推移。PLST事業も成功している。PLSTとはセオリーとユニクロの中間に立ち上げたブランドで、2012年8月期末で43店舗を展開するに至っている。これは将来的にも大きな事業に成長する可能性がある。
アメリカではゼイスキンズさんというというオートクチュールの優秀なクリエーターがいて、「theyskens’ theory」を立ち上げ、ブランドの再活性化に貢献している。また数年前に購入した「Helmut Lang」も好調だ。
ヨーロッパは、2012年9月、パリのサントノーレ通りに「theory」のフラッグシップストアを開業した。これは日本のクリエーターがデザインした店舗であり、現地では評判になっている。
セオリー事業は、いまからグローバルに飛躍できるのではないかと期待する。今後は、ヨーロッパを初めアジアでも本格的な展開ができると考えている。
コントワー・デ・コトニエとプリンセス タム・タム事業は、グローバルワン全員経営を実践しており、新CEOを招聘して経営陣を強化していきたいと考えている。
フランスを中心にヨーロッパ全土で展開するだけの事業基盤をつくった。この春夏から売上が回復の兆しを見せている。
ジーユー事業は、タレントのきゃりーぱみゅぱみゅさんを新しいCMに利用した。ある意味では幼稚でおもしろいTVCF。「ファッションがあって安い」という単純さが受けるのではないかと思う。
2013年8月期の売上高予想はおよそ800億円であり、たぶん到達すると思う。2014年8月期予想は1000億円だ。
ジーユー事業の成功要因は単純だ。ファッション性と超低価格が両立していることに尽きる。それと「ゆるパン」や「マキシワンピース」など次々と人気アイテムを展開していくことも要因のひとつだ。銀座旗艦店などを出店し、ブランドビルディングに努めたこと。人気タレントのTVCM効果で知名度が飛躍的に向上したこと――。
将来はジーユーをユニクロに次ぐ第二の柱にしたいと考えており、とくに海外に出ていくときに知名度がまったくない市場でも凄い武器になるのではないかと思う。
次の10年間でポテンシャルとしては、売上高1兆円の可能性がある業態だと思う。
そして、ファーストリテイリングの長期ビジョンについて言うなら、ユニクロ日本、ユニクログレーターチャイナ、ユニクロ欧米、ユニクロその他アジア、ユニクロ欧米、ジーユー、アフォーダブルラグジュアリー(セオリー、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タムなど)を事業の柱にし、2013年8月期の売上高1兆円を2020年8月期には5兆円にまで拡大することだ。
いま、全世界が不況になりつつある。しかしこういう時期こそ次世代小売業が待たれている。不況の時期にこそ新しい小売業が大きく成長するものだ。我々は不景気になればなるほど出店したいと考えている。幸いキャッシュフローも潤沢なので、出したい時期に出したい店舗を出せる。
2013年8月期決算(連結)の業績予想は、売上高1兆560億円(対前期比13.7%増)、営業利益1435億円(同13.5%増)、経常利益1425億円(同13.8%増)、当期純利益845億円(同17.9%増)を見込んでいる。
①国内ユニクロ事業の売上高は6530億円(同5.3%増)、営業利益1090億円(同6.5%増)を予想。②海外ユニクロ事業は売上高2160億円(同41%増)、営業利益160億円(同45.5%増)。③グローバルブランド事業は売上高1850億円(同20.9%増)、営業利益185億円(同27.2%増)だ。