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カインズ新本部 ―広く会議を興す―

 ホームセンター(HC)大手のカインズ(埼玉県/土屋裕雅社長)は2012年10月1日、上越新幹線「本庄早稲田」駅前に新本部(埼玉県本庄市東富田88‐2)を竣工。同9日より、本格稼働させた。

 

 敷地面積は1万8581㎡。5層からなる建物の建築面積は8842㎡、延べ床面積2万6911㎡、駐車台数454台。規模は群馬県高崎市の旧本部の約8倍に拡大している。

 

 《創るをつくる》

 新本部の入り口には、土屋社長の名前で、この標語を刻んだモニュメントが置かれた。

 そしてこの言葉は、同社のSPA(製造小売業)企業への不退転の決意表明と見てとれる。

 

 標語にあえて主語を置かなかったのは、いろいろな含みを持たせているからと考えられる。SPAと企業としての商品づくりはもちろん、店づくり、システムづくり、組織づくり、新規事業づくり…そしてもっとも力を入れているのは、それらの担い手というべき人づくりだろう。

 

 だから新本部では、人材育成と能力開発強化を念頭に、①1200人収容のカインズホール、②大会議室、③研究室、④自己育成ルームなど、さまざまな部屋を用意した。ふんだんに座学や実践の研修を繰り返しながら、人材の育成を図っていくという。

 

 一方、現在、従業員約600人が勤務する執務スペースは3階のワンフロアのみに集中させている。

「旧本部は2フロアだった。タテの移動で従業員同士の意思の疎通を図っていくことは意外とたいへんなものだ。そこで今回は、ワンフロアに全員が机を並べている。一部部署を除いて私の席からも一望できるようになった」と土屋社長は満足げだ。

 

 実際の3階の執務フロアを見ると、デスクは一定の法則を持たずに意図的にバラバラに並べられている。そのデスクとデスクの間には、ちょっとしたミーティングスペースを設けた。さらには立ったままで会議ができるスペースもある。

 

「幅広い会議を興したい。特定の部署の人たちだけでこもって会議するのではなく、外の人にもどんどん口を出してもらい、ワイワイガヤガヤ騒がしい本部にしたい」と土屋社長はその理由について話してくれた。

 

 SPAを志向するということは、従来の小売業としての本部機能のほか、R&D(リサーチ・アンド・デベロップメント)機能も必要になるということだ。

 R&D機能の源泉はアイデアにある。そのアイデアは従業員間、対外部間のコミュニケーションから生まれるとするのであれば、それを活発化させることがすなわちSPA機能の強化に直結すると言えるだろう。

 その一環として、新本部には、記者がいつでもふらりと立ち寄れる「プレスルーム」を設けるなど、外部からの意見を拾うことにも貪欲な姿勢を見せている。

 

 ただ、総投資額約100億円(私の推定)の立派な威容を前に土屋社長は、自戒も忘れていない。

「本部が立派になると、それだけで従業員も立派になったと勘違いしてしまうことが多い。しかし大きな投資をしたということは、その分、稼がなければいけないということだ。また、立派な施設とは、ややもすると“大企業病”のように官僚主義が台頭しやすい環境になるので要注意だ」と語った。

 

<カインズ企業概要(2012年2月期)※店舗数は2012年10月10日現在>
・資本金32億6000万円
・売上高3425億円
・店舗数185店舗(23都道府県)
・社員数8965人