朝の時間帯、喫茶店がドリンク、トースト、ゆで卵などのセットを割安で提供する「モーニングサービス」。発祥地については諸説あるものの、今では全国へと広がり、各地で独自の進化を遂げている。今回はモーニングを出す店が多い激戦地のひとつ、名古屋でモーニングを食べるという話だ。
モーニングの発祥地は広島、愛知と諸説
仕事であちこちの都市へ行くと、いつも楽しみなのはその土地ならではの食べ物。自然、産業、気候、人々のライフスタイルなど各地で異なる要因を背景に、独特な料理、さらに食文化が形成されているというのは興味深い。
その点、名古屋は非常に特徴ある土地だ。少し考えるだけでも「ひつまぶし」「味噌煮込みうどん」「あんかけスパゲティ」「エビフライ」「名古屋コーチン」など、「名古屋と言えば」という食べ物や食材を容易に挙げられる。
私にとっては、それらの仲間に入るのが「モーニング」である。スマホで「名古屋 モーニング」を検索するだけで、数々の喫茶店がヒットするところを見ると、一般の方の頭の中にも、「名古屋といえばモーニング」という図式が定着しているのではないだろうか。
そう考え、朝、名古屋駅周辺にある「エスカ」や「サンロード」「メイチカ」などの地下街を歩いてみた。すぐにモーニングサービスをアピールする店をいくつも発見、さらに人気店には長い行列ができている光景にも出会った。
名古屋で定着しているモーニングではあるが、サービスの内容は一様ではない。コーヒーや紅茶などのドリンクを頼めば、同料金でパンやゆで卵をつける店があるほか、それらを最初からセットにして割安で提供する店もある。熾烈な競争環境の中、各店各様、独自の工夫によって集客を図っているのがわかる。
さてモーニングサービスの発祥地だが、実は名古屋市ではなく、愛知県一宮市、同豊橋市、広島県広島市と諸説あるようだ。まず愛知県一宮市だが、繊維業が盛んだった昭和30年代、打ち合わせに使われることが多かった喫茶店で、コーヒーにゆで卵、ピーナッツをつけたのが始まりと言われる。豊橋市では、水商売の従業員が通う店で、コーヒーとともにパンを出した。また広島市の喫茶店では、コーヒー代に少しの金額を上乗せした価格で、目玉焼きを乗せたパンを提供したという。
書籍や資料もあるようなので、興味のある方は読んでみるとよいだろう。
パンとあんの量が絶妙のサンド
名古屋のモーニングサービスを体験してみたいと思い、私は利用する店を調べた。その結果、数ある名店の中、名古屋駅から近い「リヨン」に決めた。創業は1974年とのこと。長年愛されてきたモーニングはどのようなものだろうかと期待が高まった。
そして店に到着。歴史を感じさせる外観である。
私がリヨンを選んだ最大の理由は、1日中、モーニングを出していると知ったからだ。店のパラペット部には、店名とともに「モーニング喫茶」の文字。さらに入口横には「1日中 モーニングサービス付」と記した看板が立っている。
終日、モーニングを食べられるのはうれしいが、「そもそもモーニングって何だ?」という疑問も頭をよぎる。しかし追求するのもナンセンスなので、深く考えずに入店した。事前調査では「行列必至」との書き込みがあって覚悟したが、案外、スムーズに入れたのはラッキーだった。
案内された席に座ってメニューを確認。コーヒーなどドリンクを注文するとともに、サービスのホットサンドやカステラなどを選ぶシステム。6種類あるうち、私は「小倉あんプレスサンド」にした。
店内を観察すると、店内は満席である。地元の方というよりも、観光客の方が多い印象。皆さん、楽しそうに食事をしている。
しばらくして目の前に届けられたのがこれ。コーヒー、そこに長細い食パンに小倉あんをはさんでプレスしたホットサンド、さらに柿の種のような菓子の小袋もついている。この何ともいえない組み合わせが名古屋らしい。
まずサンドから食べたが、パンとあんの量が絶妙で、とてもおいしい。適度に焼いてあるためか食感もおもしろい。続いてコーヒーを飲んだが、きちんと淹れているのだろう、風味豊かで私好みだった。食べ進め、柿の種、そして少し残しておいたコーヒーでフィニッシュした。
入口の方に目を向けると、さっきは空いていたのに行列ができている。食事を終えた私は、お勘定を済ませ、店外へ出た。なお代金は480円。これぞ名古屋というモーニングを初体験、大満足した。