平日の16時――。
高齢の男たちを集め、ものすごい賑わいを見せている場所がある。
居酒屋である。
席数は30弱。私たちが入店した時には、《宴もたけなわ》といったグループも多く、満席。ところがサラリーマンたちが出現する17時30分ごろには、その多くが1人当たり1000円~2000円の勘定を済ませ、三々五々、帰路につく。
「さしずめ居酒屋『年金』だな」と連れは感想を漏らした。
定年後のサラリーマンの多くは、家の中に居場所がないと言われ、かといってモーレツに働いていた影響で、生涯の趣味もなく、真っ昼間から集っては、酒を飲んでいる。
1人で飲む老人の姿も少なくなく、そこにリタイヤ前の雄姿を見出すことは難しかった。
すべての席に共通していたのは、お客のほぼ全員がタバコを吸う、という前時代的な光景だ。
有線のBGMは70年代から80年代にかけて流行った歌謡曲。お客の年齢を65歳前後と想定すると、働き盛りだったころに流れていた“軍歌”なのだろう。
昼間から酒をあおる老人というのは、決して美しくも格好よくもないけれども、ここにしか逃げ場がない人たちというのは確実にいるのだと確認できた。
そして、そこには市場があるということだ。