2分5秒に1組の夫婦が離婚している日本(厚生労働省「人口動態統計」)。
この惨劇的状況を逆手にとって、「離婚式」なる新儀式をプロデュースするのは、寺井広樹さん(32)だ。
寺井さんは、「離婚式」を「人生の再出発式」と位置付けている。
おおまかな流れは、『別れても好きな人』などの曲をバックに旧郎(きゅうろう)・旧婦(きゅうふ)が入場。司会者から、離婚に至った経緯の説明があり、2人に挨拶をしてもらう。
次に離婚経験のある友人の挨拶があり、「離婚もまんざら悪いものではない」とエールを送ってもらう。
仲人の代わりにいるのは裂人(さこうど)さん。2人の「夫婦としての縁」を裂く見届け人で共通の友人が任命されている。
その後、最後の共同作業としてハンマー(かえるハンマー)で結婚指輪を叩き割り、会食、お開きとなる。
参列者は、ご祝儀ならぬ“ご終儀”を用意するのが通例だ。
第1回目の「離婚式」が開かれたのは2009年4月のこと。悲惨だった。
大学の先輩に頼みこんで開いたものだが、会場は重苦しい雰囲気に包まれ、司会を務めた寺井さんは、「逃げ出したくなった」ほどに後悔した。
ところが、指輪を叩き割った瞬間に2人の表情が一挙に明るくなり、会場内は拍手喝采。「意外とありだ」と考え直す。
この様子を見守っていた第1回「離婚式」の参列者の1人が2組目になった。その後、申し込み件数が増え、現在は月間4組。週1回のペースで「離婚式」を挙げている。
これまでの「離婚式」の実績は93組。申し込み者は8割以上が男性で東日本大震災後に3倍に増えたという。「たった1度の人生、この人と一緒で本当にいいのかと考える人が増えたようだ」と寺井さんは分析している。
離婚の原因は、①性格の不一致、②価値観の相違、③金銭問題、④異性問題の順だ。
去年50代夫婦の「離婚式」では、結婚指輪の叩き割りの儀式でカラ振りが続いた。
「離婚に向いてないのでは?」と参列者の多くが疑問を投げかけ、2人は離婚を思いとどまった。
こんなふうに、93組中8組が離婚を取りやめている。
「離婚式」は人間ドラマの宝庫でもあり、友人代表の挨拶で旧婦にプロポーズした男性、浮気相手を臨席させた男性、参列者同士で知り合いカップルになった人もいる。
寺井さんは、100組到達を機に「希望があれば、旧郎・旧婦のマッチングしたい」と新たな展開を語っている。
詳しくは、http://www.rikonshiki.com/をクリック。寺井さんの著書『離婚式へようこそ』(リンダパブリッシャーズ刊:1050円)もご一読ください。