報道協定とは、身代金目的の誘拐事件などの人質事件が発生した場合に人質の安全を確保するため、警視庁や道府県警が新聞・テレビ等のマスメディアに対して報道を一切控えるように求めることによって、マスメディアとの間で結ばれる協定のことだ。
第一号は、1963年の「吉展ちゃん誘拐殺人事件」である。
食品の業界では、「江崎グリコ社長誘拐事件」(1984年)や「ハウス食品脅迫事件」(1985年)での報道協定が有名なところ。こうした制度は日本にしかない。
だからというわけではないのだろう。
日本の大マスコミは情報をコントロールしがちだ。
今回の東日本大震災報道で特徴的だったのは、日本国民は災害に直面しながらも平常心を失わず、相互に助け合っていると、美談ばかりが目立ったことだ。
ところが実際に、被災地に足を向けてみれば、泥棒、強盗、略奪の話題は少なくなく、ATM(現金自動預け払い機)は破壊され、コンビニエンスストアは襲われ、レンタル店を荒らしまくられといった事実をあちこちで耳にする。
大マスコミはこの実態を知らないわけではないだろう。
しかし、報道しないのは、報道協定よろしく同じような犯罪の続発を避けるための“自主規制”からくるのだろう。
福島第一原子力発電所から時々刻々と発し続けられる放射線の深刻度についても同じだ。
大マスコミはパニック回避の“自主規制”の名のもと、「セシウム飛来」「炉心溶融」など入手した情報の半分も報道していないのではないか、とつい疑り深い目で見てしまう。
人命救助の目的の報道協定の場合は、いたしかたないところもあるが、大マスコミの“自主規制”の実態を、受け手である大衆は、もう完全に見透かしている。