こういう仕事をしていると、セミナーや講演会などの座学の場に出席する機会が少なくない。
講演者の話を聞きながら、いつも思い浮かべるのは、ダイエー創業者の中内功さんの姿である。中内さんは、興味のあるセミナーや講演会を受講するときには、いつでも決まって最前列に陣取り、講演者が話をしている最中、ずっと必死にノートを取っていた。
もともと大変な勉強家であり、メモ魔でもあるから、当然と言えば当然かもしれない。
その姿には、棟方志功が版画を彫る時のような迫力があり、「よくぞこれほど打ちこめるものだ」と反省させられることしきりだった。
時代は、20年ほど下り、現代――。
どのセミナーや講演会に出席しても、あれほど情熱的に他人の話に耳を傾ける聴講者を目にしたことはない。
船をこぐ人や、集中していない人もたくさんいるけれども、結構な参加費用を払っていることを考えると、もったいない気がする。