D2Cというビジネスモデルが注目を集めている。
「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の略語であるD2Cは2007年頃にその原型がつくられ、13~14年にかけて急成長。18年あたりから、日本国内でもメディアを賑わせており、「ダイヤモンド・チェーンストア」誌でもたびたび取り上げている。
カジュアル衣料チェーンのストライプインターナショナル(岡山県)の石川康晴社長も、本誌インタビューにおいて、「アパレル業界は10社ほどの大手が生き残り、それ以下はD2Cのマーケットになっていくだろう」と発言、既存ビジネスに取って代わる、小売ビジネスの新潮流になると指摘している。
将来的に、小売の歴史は、「D2C以前」「D2C以降」と分類されて語られることになるだろう──。
著者である佐々木康裕氏は、本書の前書きでこのように述べている。D2Cの定義を明らかにしたうえで、「顧客」と「ブランド」の間にどのようなパラダイム・シフトが起きているのかを解説。D2Cブランドの成功譚を紹介しながら、D2Cの先に待ち受ける「ポストD2C」にまで言及しているのが本書である。
日本ではD2Cモデルのプレイヤーはまだ少ないが、流通先進国の米国ではすでにD2Cブランドを展開する企業が既存の小売業に取って代わろうとしている。たとえば、本書1章で取り上げている、マットレスのD2Cブランドであるキャスパー(Casper)は創業から4年で、売上高400億円に到達。19年には、評価額1000億円を超える未上場企業「ユニコーン」に仲間入りしている。
このキャスパーの快進撃の影響により、旧来の店舗型ビジネスであった米寝具マットレス最大手マットレスファーム(M a t t r e s sFirm)は18年10月に破産法適用を申請、数百店規模の店舗閉鎖に追い込まれている。まさに既存小売がD2Cにディスラプト(破壊)された格好だ。
なぜ、キャスパーは短期間で急成長を遂げることができたのか。
D2Cの台頭に既存の小売業はどう向き合えばいいのか。本書を読めば、現在のD2Cで起きていることの全容を把握できるはずだ。