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オーシャンシステム代表取締役社長 樋口 勤
グループの事業ノウハウを互いに活用
チャレンジャーは来年以降、出店を再開

弁当と宅配事業に続き、1990年には小売事業に参入して、成長を続けるオーシャンシステム(新潟県/樋口勤社長)。食品スーパー(SM)の「チャレンジャー」を新潟県内に9店舗展開し、業務スーパーの店舗網も拡大している。チャレンジャーは新潟県外への出店も検討を始めている。同社の経営戦略について、樋口社長に話を聞いた。

聞き手/千田直哉(チェーンストアエイジ)


カウボーイとのFC契約で
小売事業に本格参入

オーシャンシステム代表取締役社長 樋口 勤 ひぐち・つとむ 1950年6月25日生まれ、新潟県出身。69年3月、新潟県立燕工業高校卒業。同年4月、ひぐち食品入社。77年11月 株式会社ひぐち食品設立、取締役に就任。82年1月 株式会社ひぐち食品新潟設立、取締役社長に就任。98年4月 株式会社オーシャンシステム、代表取締役副社長に就任。2009年6月 同社代表取締役社長就任。

──まず、御社の成り立ちについて教えてください。

 

樋口 もともとは私の父が1955年に新潟県三条市内に開業した食品販売店が始まりです。その後、長岡市内の精肉店で働いていた長兄(現取締役相談役の樋口洋平氏)が三条に戻り、主に精肉の販売を始めました。そのうち総菜も売り始めたのです。総菜をお買い上げいただいた方から、是非お弁当をつくって届けてくれないかという要望があり、63年にひぐち食品を創業し、弁当の販売を始めたことが、当社の土台になります。

 

──弁当の次には宅配事業をスタートさせ、その後はさらに多角化を進めています。

 

樋口 新たな事業展開を模索していた長兄が、夕食材料の宅配事業を始めたばかりのヨシケイ開発(静岡県/矢吹武治社長)さんを知りました。78年に次兄(前代表取締役会長の樋口毅氏)がヨシケイさんとFC(フランチャイズ)契約し、ヨシケイ新潟を設立しました。現在は宅配事業部として、新潟県、群馬県、北海道で夕食材料の宅配を行っています。

 

──小売事業にはいつごろ参入されたのですか。

 

「チャレンジャー燕三条店」(新潟県燕市)はチャレンジャー9店舗の中で最も高い売上を誇る

樋口 91年3月に次兄が、北海道でディスカウントストア(DS)を展開していたカウボーイと本州では初のFC契約を結び、新潟カウボーイを設立したのが始まりです。新潟カウボーイ1号店は、新潟県燕(つばめ)市内にある現在のチャレンジャー燕三条店のある場所に出店しました。営業は土日のみでしたが、大変繁盛しました。

 

 しかし、カウボーイとのFC契約を解除することになり、店舗名をチャレンジャーに変更しました。

 チャレンジャーとして再出発した当時は、土日営業というカウボーイのノウハウしかなかったために、大変な苦労を強いられました。そこでSMのノウハウを吸収するため、99年11月にダイエー(東京都/桑原道夫社長)さんが新潟県内に展開していたセイフー8店舗の営業権を譲り受けたのです。同時に優秀な人材にも入社してもらい、チャレンジャーの基礎が固まりました。現在、チャレンジャーは新潟県内に9店舗を展開しています。

 

──98年にオーシャンシステムに社名変更していますが、どのような経緯があったのですか。

 

樋口 今お話ししてきたように、「弁当」「宅配」「小売」と事業ごとに会社を設立し、成長を続けてきました。しかし、事業を一度整理し、新たな成長戦略を描く必要があると判断したのです。そのため98年4月にグループ企業を統合し、現在のオーシャンシステムに社名を変更しました。

 

 2011年3月期の売上高は対前期比3.0%増の379億2983万円で、内訳は小売事業が68%、ランチサービス事業(主に弁当販売)が17%、宅配事業が14%、フードサービス事業(旅館経営など)が1%です。

SVがバイヤーを兼務
仕入から販売まで責任を明確にする

──小売事業では神戸物産(兵庫県/沼田昭二会長兼社長)とFC契約を結び、業務スーパーを積極的に展開されています。

 

樋口 01年12月、チャレンジャー燕三条店の隣に業務スーパー1号店を開業しました。現在は8県(新潟県、宮城県、山形県、福島県、群馬県、長野県、富山県、茨城県)に60店舗を展開しています。

 

 神戸物産さんとの間で各県ごとに結んでいるFC契約では、私たちがサブフランチャイザー(サブFC本部)となることも含まれています。直営店舗だけでなく、サブフランチャイジー(サブFC加盟社)を募集して、店舗網の拡大を図っています。

 

 業務スーパーの店舗数の内訳は直営が29店舗、私どもがサブフランチャイザーとして契約を結んでいるサブFC店舗が31店舗です。

 

 業務スーパーのモデルは、売場面積が100~180坪、取扱品目数が2500アイテム、1店舗当たりの売上高が3億円です。

 業務スーパーは人口5万人に対して1店舗は出店できると考えています。現在展開している8県の人口を合わせると約1600万人。単純に5万人で割れば300店舗以上の展開が可能となります。業務スーパーだけでも計算上、1000億円程度の潜在性があると考えています。しかし、出店を急がずに、まずは5年後に100店舗体制を築くことを当面の目標にしています。

 

──チャレンジャーの基本的なフォーマットはどうなっていますか。

 

樋口 チャレンジャーは売場面積500坪、約1万アイテムを揃えています。1店舗当たりの売上高は15億円をモデルとしています。

 

──チャレンジャーの売場は生鮮食品の目玉商品が非常に安いうえに、日配品や加工食品では競合するSMでは見かけない食品メーカーの商品を低価格で販売しています。価格競争力の強さに大変驚きました。

 

樋口 生鮮食品については、基本的に9店舗分の商品をまとめて仕入れていますが、安く仕入れられる商品がたとえ小ロットでも見つかれば、1店舗分だけでもすぐに仕入れるように敏速に対応しています。

 

 日配品や加工食品では、味や品質、機能が同じであれば、トップメーカーではない取引先を選んだほうが、安く仕入れることができます。そのため、品質がよいにもかかわらず、ブランド力が足りないために苦戦している新潟県内の食品メーカーとの協業に力を入れています。

 

──協業では具体的にどのようなことに取り組んでいるのですか。

 

樋口 チャレンジャーの店内では彼らとともに共同開発した商品を単品大量陳列し、販売数量を増やして利益確保を図っています。それに伴って、当社ではお客さまに対して低価格かつ品質のよい商品を提供できる態勢が整いつつあります。一方、取引先は業績が大きく改善しました。まさにウイン‐ウインの関係です。当社以外との取引を拡大し、さらに成長しているメーカーもあるほどです。

 

──チャレンジャーの商品政策ではどんなことを考えていますか。

 

樋口 チャレンジャーでは常に仕入れ先を開拓しています。スーパーバイザー(SV)がバイヤーの職務を兼任しており、商品の仕入れから販売まで一気通貫で責任を持たせています。そうすることで、仕事に対するモチベーションが大きく向上します。

 規模の大きい企業ではバイヤーとSVの役割が分断されてしまい、仕入れと販売の間で温度差が生じてしまうという話を耳にします。チャレンジャーはまだ9店舗ですから、小さな組織ならではの小回りが利く方法で、販売力を強化しています。

 

 また、チャレンジャーの売場では、基本的に業務スーパーの商品も揃えています。この点も神戸物産さんとのFC契約内容に含まれており、チャレンジャーの品揃えを特徴づけるひとつだととらえています。

チャレンジャーは出店エリアの拡大を検討

──今後のチャレンジャーの出店計画はどうなっているのですか。

 

樋口 09年6月の社長就任から2年の間は出店を抑えて、既存店の底上げを図ってきました。

 

 来年度以降は積極的に出店していく考えで、チャレンジャーは年間1店舗、業務スーパーは年間5店舗の出店ペースを維持したいところです。チャレンジャーは現在までのところ新潟県内のみの展開ですが、東日本大震災を機に店舗戦略の転換も検討するようになりました。ある地域に集中展開することはリスクが大きいからです。そのため出店エリアを拡大していくことも考えています。

 

 一方、業務スーパーについては、直営店では居抜き出店を基本として、できるだけ初期投資を抑えることを心掛けています。東日本大震災の影響もあり、新たに業務スーパーのFCを始めたいと考える企業が増えており、業種業態を問わず多くの問い合わせを受けています。

 

──創業時から続いているランチサービス事業でも、新たな展開を考えていると聞きます。

 

2011年9月26日に開業した「百米 神田司町店」(【東京23区「安心・安全な街」】と千代田区)。オープン初日には女性客が行列をつくった

樋口 全国の事業所向け宅配弁当の「フレッシュランチ39」と、首都圏オフイス向けの「こしひかり弁当」を合わせると、1日7万6400食を販売する規模にまで成長しました。

 

 そして、今後は首都圏向けのこしひかり弁当の販売を強化していく考えです。現在、東京23区内で「百米」というこしひかり弁当の直営販売店を5店舗展開しています。今年9月26日に開業した5号店の神田司町店では、店内で新潟県魚沼産のこしひかりを炊くことで、出来たてのお弁当を提供する取り組みを始めました。

 

 百米の店舗では、弁当の販売はお昼過ぎに終了します。われわれは「二毛作」と呼んでいますが、弁当の販売終了後は店内で新潟名物の「たれカツ」を、夜には串カツをイートイン形式で提供します。実は、この百米の事業はFC展開を前提にしており、1日を通じて採算がとれる店舗運営のモデル構築を急いでいます。すでにFC契約の問い合わせも多く、販売代理店も含め、早期に100店舗体制をめざします。