アルコール度数の低い飲料が市場で存在感を増している。高いアルコールによる健康への影響を懸念する傾向が強まる中、メーカーは低アルでも飲み応えのある商品や「立ち飲み」できる空間を展開。普段飲酒しない人もターゲットに売り込みを加速させる。
調査会社インテージによると、手軽に酔えることで人気を集め、これまで市場をけん引してきたアルコール度数8~9%の「ストロング系」は、2021年から3年連続で売り上げが減少。今年2月には厚生労働省が適量飲酒を呼び掛ける指針を初めて示したこともあり、一層逆風が吹いている。
メーカー各社はこれを低アルの商機と捉え、品ぞろえの拡充を急ぐ。低アルの定義はメーカーによって異なるが、ビールや酎ハイでは一般的に度数4%以下とされている。
キリンビール(東京)は9月、度数3%の缶酎ハイ「キリン 華よい」を発売した。日常的にあまり飲酒しない若年層について「ビールよりもフレーバーが多い酎ハイの方が入り口になりやすい」(広報)と分析。果実感を際立たせ、軽やかな味わいに仕上げた。宝酒造(京都市)も度数3%の新ブランド「発酵蒸留サワー」を売り出した。
アサヒビール(東京)などは22年、低アルに特化した飲食店「スマドリバー シブヤ」をオープン。度数0%、0.5%、3%を中心に大学生と共同開発したドリンクなど約150種類を取りそろえ、20、30代の来店者が9割を占めるという。今年3月からは立ち飲みできるスペースも設け、酔った気分を楽しめる空間づくりにも工夫を重ねている。
一方、度数15%前後が一般的とされる日本酒では、月桂冠(京都市)が5%の「アルゴ」を市場に投入した。