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実質賃金、27カ月ぶりプラス転換=1.1%増、賃上げ効果波及―6月

都内を歩く通勤者
(i-stock/ponsulak)

 厚生労働省が6日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は前年同月比1.1%増と、27カ月ぶりにプラスに転換した。2024年春闘で妥結した高い賃上げ率が浸透して基本給が伸びたほか、好調な企業業績が反映されたとみられるボーナスの増額が主因。

 実質賃金のプラス転換により、個人消費の回復を通じた日本経済の成長が期待できる。一方、米国経済の悪化に対する警戒感や円相場の急騰を背景とする株価の下落が、消費者マインドを悪化させる可能性もあり、先行きは不透明だ。 

 基本給と残業代などを合わせた名目賃金は労働者1人当たり平均で4.5%増の49万8884円だった。プラスは30カ月連続。このうち、賞与など「特別に支払われた給与」が7.6%増と名目賃金の押し上げに寄与。基本給を中心とする「所定内給与」も2.3%増と29年8カ月ぶりの高い伸び率となった。

 一方、実質賃金の算出に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率は、3.3%と前月から横ばいだった。

 岸田政権は「賃金と物価の好循環」を掲げてきた。厚労省は、実質賃金のプラス転換の理由を「特別に支払われた給与の伸びの影響が大きく、手放しには喜べない」(担当者)と指摘。ただ、政府が8~10月使用分について電気・ガス代への補助金を再開する。加えて、為替が円高方向に推移して輸入物価が低下すれば、「プラスが続く可能性がある」(同)とみている。

 就業形態別の名目賃金は、正社員ら一般労働者が4.9%増の66万4455円、パートタイム労働者は5.7%増の12万1669円。1人平均の総実労働時間は、2.8%減の140.5時間だった。