2025年春卒業予定の大学生らの就職活動で、政府が採用選考活動の解禁日と定めた1日、主要企業による面接が始まった。ただ、すでに内定率が8割に上るとの調査もある。人手不足を背景とした人材獲得競争が激しくなったことから、採用は一段と早期化し解禁日の形骸化が進んでいる。
リクルートの就職みらい研究所によると、5月15日時点の大学生の内定・内々定率は78.1%だった。前年同時期の調査(72.1%)と比べ上昇した。
三井住友海上火災保険や伊藤忠商事は6月1日に面接を開始したが、「早期に内定を勝ち取り、そのまま企業を決めてしまう学生も非常に多い」(三井住友海上の採用担当者)と悩む声も上がる。同研究所は「優秀な人材を確保するには、大手企業でもスケジュールを順守したくてもできない状況になりつつある」と指摘する。
採用競争とともに、早期化の一因とみられるのがオンライン面接だ。コロナ禍で一気に広がり、収束後も定着した。地方や海外の学生が選考を受けやすくなるという利点に加え、企業側にとっても選考過程の効率化につながり、内定を出せる時期が早まった。
一方、学生への配慮から6月にこだわらない企業もある。三菱商事は3月と6月の2回に分けて選考を実施。「学生の事情に応じて就職活動のタイミングを選択できる」と説明する。
就職みらい研究所の栗田貴祥所長は「6月解禁のルールと実態との乖離(かいり)が大きくなれば、学生の混乱を招く」と指摘した上で「学業に影響が出ないよう、今までとは違う就活の在り方の議論が必要ではないか」と話している。