福島県内でスーパーを展開するいちい(福島市)は20日、岡山理科大、NTT東日本と共同で、ベニザケの陸上養殖に成功したと発表した。事業化は「世界で初めて」(いちい担当者)という。三者は2022年1月から、同大開発の人工海水を用いた実証実験を行っていた。21~23日に福島市内の店舗で刺身やすしで試験販売する。
現在、生食用のベニザケは約6割を海外輸入に頼っているが、ウクライナ侵攻などを背景に、価格は15年比で2倍に高騰している。
ベニザケは出荷できる成魚になるまで通常4年ほど掛かるが、同大開発の人工海水「好適環境水」を用いた完全閉鎖循環式の陸上養殖では、1年半で出荷が可能という。実験では、1000匹の稚魚を養殖し、200匹が販売可能な体長約50センチ、重さ約1.2キロまで成長した。今後は、養殖規模を拡大し本格販売に乗り出したい考え。
いちいの伊藤信弘社長は、「さまざまな環境の変化で、魚を取り扱いにくくなっており、将来的には自分達で魚をつくっていかなくてはいけないと社内で話していて、実証に参画した。安全安心と思ってもらえる魚を届けられる」と強調した。