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上方修正も高くない回復力=海外減速・物価高が重し―1~3月期GDP改定値

大勢の人でにぎわう銀座4丁目の交差点
〔写真説明〕大勢の人でにぎわう銀座4丁目の交差点=1月22日、東京都中央区(時事通信社)

 内閣府が8日発表した1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質ベースの前期比で年率換算2.7%増と、速報値の年率1.6%増から高い上方修正となった。ただ、内訳を見ると企業の在庫取り崩しが少なかったことによる押し上げ効果が大きく、日本経済の回復力は見た目ほど強くないのが実情。先行きはサービス消費を中心にコロナ禍からの回復が当面続く見通しだが、海外経済の減速や物価高が引き続き重しとなりそうだ。

 事前の民間シンクタンク10社による改定値予測平均は年率1.8%増と小幅な上方修正を見込んでいたが、実際の数値はこれを大きく上回った。

 主因は民間在庫で、企業が抱える輸送用や生産用機械の仕掛かり品在庫がプラスに寄与した。だが、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは、民間在庫のプラス幅が改定値で伸びた背景には、海外経済の減速で輸出が弱く、在庫の取り崩しが少なかった影響があると分析。「日本経済にとってポジティブなものとは言えない」と指摘する。

 足元の4~6月期については、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行したことなどを受け、旅行といったサービス消費やインバウンド(訪日客)消費が下支えする見込み。1~3月期改定値で企業による設備投資が堅調だったことも好材料で、内需を中心に緩やかな回復が期待される。

 その一方、輸出はマイナスに転落し、米欧の利上げ継続による景気の冷え込みでさらに減速しかねない状況だ。また、国内の4月の実質賃金は前年同月比3.0%減と13カ月連続のマイナス。値上げの動きに賃上げが追い付いておらず、消費回復の持続力には不透明感がある。

 農林中金総合研究所の南武志理事研究員は「海外経済は減速傾向を強め、消費者には節約志向が見られる。2023年中は内外経済とも厳しい」とみている。