新型コロナウイルス禍が始まって以降、3度目となる忘年会シーズンを迎えた。感染の「第8波」入りが懸念される中、少人数での開催など「ウィズコロナ」が定着しつつある。一方、忘年会を控える年が続いたこともあり、民間調査では「必要ない」という意見が7割に上った。識者は「私的なイベントに変化してきた」と指摘する。
東京・新橋の焼き鳥店「山しな」。12月上旬の夜、店内では2人組の客らが透明なフィルムの仕切り越しに乾杯していた。知人と訪れた50代の男性会社員は「コロナで忘年会が減り、少人数でやることが増えた。会社には感染対策のしっかりした店でやるよう言われている」と話す。
店主の山科昌彦さん(47)によると、客足は「昨年よりは2、3割増加した」というが、コロナ前と比べると7割程度。忘年会自体が減っており、「コロナ禍だから仕方ないが、一年で一番の稼ぎ時なので打撃は大きい」と危機感を募らせる。
情報通信会社「ビッグローブ」(東京)が11月9、10日に全国の20~50代の男女1000人に実施したインターネット調査によると、今年忘年会を開催する予定がある人は15%程度にとどまった。背景には人々の意識の変化もあるとみられ、職場関係の忘年会に「参加したくない」と答えた割合は約8割。忘年会が「必要だと思わない」という人も7割に上った。
新橋のサラリーマンからはさまざまな声が聞かれた。サービス業の男性(28)は「なくていい。毎日会っているし、付き合いで会があっても楽しくない」。最近転職したばかりという20代の女性会社員も「以前の職場ではあったが、上司が来ると気を使うし嫌だった」と明かした。
一方、保育士の女性(31)は「仕事以外のプライベートな話もできて関係性が深まる」と肯定的だ。入社1年目の男性会社員は「コロナで忘年会がなくなってしまった。まだ職場に慣れておらずありがたいと思っていたので残念」と話した。
千葉商科大の常見陽平准教授(労働社会学)は「忘年会が公的なイベントから私的なイベントに変わった」と分析する。「何となくやるものから、意味を問うものになった。これからは会社の有志だけでやるような私的なものが増えていくだろう」と話した。