【上海時事】新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が、中国経済に対する外資の信頼を揺るがしている。国際金融都市、上海では3週間近く、大半の地域でロックダウン(都市封鎖)が継続。それでも感染者は1日2万人を超えるペースで増加が続き、出口の見えない状況に外資のいら立ちが高まっている。
上海の域内総生産(GDP)は中国全体の4%近くを占める。国際的な物流・金融センターとして、多くの外資系企業が中国ビジネスの統括拠点を置き、「国内と海外の市場をつなげる重要な役割を持つ」(孫春蘭副首相)とされる。
ただ、都市封鎖は外資のビジネスを直撃している。上海や周辺地域の日本の商工団体によると、市内では大半の工場が生産を停止。物流は国内各地の道路や港湾、空港など至るところで寸断し、事業継続が困難になっている。上海総領事館の赤松秀一総領事は宗明副市長に宛てた書簡で「悲痛な叫び声が届いている」と、日系企業の苦境を伝達。生産を国外などに「振り替え始めている」と撤退につながる可能性を警告した。
危機感を持った中国当局は規制の一部見直しに着手。重要企業の生産活動を後押しする構えで、米電気自動車(EV)大手テスラは今週、約3週間ぶりに操業を再開する見通し。ただ、物流寸断や取引先の操業停止は長引いており、本格的な復旧は難しい状況だ。
食料不足や医療不安などから、欧米企業の駐在員の間では家族を帰国させるケースが増加。日本人駐在員の間でも「何とか家族だけでも脱出させたい」といった声が上がり始めている。