【ワシントン時事】米労働省が1日発表した3月の雇用統計では、失業率が前月比0.2ポイント低下の3.6%と、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年2月の水準(3.5%)に迫るなど、労働市場の堅調さが改めて確認された。中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は雇用回復を踏まえ、インフレ抑制を優先して積極的な利上げを進めるとみられる。
雇用統計の発表直後、バイデン大統領は演説で「記録的な失業率の低下」を誇った。一方で、40年ぶりの高い伸びが続く物価について「制御するために一段の措置を取る必要がある」と対策を強化する姿勢を示した。
ロシアのウクライナ侵攻を受けた原油など資源価格の高騰は、インフレを一段と助長しかねない。11月の中間選挙を控え、米国内で物価高抑制が大きな政治課題に浮上する中、良好な雇用統計は「FRBの積極的な金融引き締めを正当化する」(米銀エコノミスト)形となりそうだ。市場では、5月の金融政策会合で0.5%の大幅利上げが決定されるとの観測が強まっている。
一方、FRBの過度な引き締めが、23年以降の景気落ち込みを招くとの見方も取り沙汰される。金融市場では10年物の米国債利回りが2年物を一時下回り、景気後退の予兆とされる「長短金利の逆転(逆イールド)」が起きた。
ただ、逆イールドには、FRBがコロナ危機対応の量的金融緩和策で大量に購入した国債を保有し続けていることが長期金利を圧迫し、「ゆがみをもたらしている」(FRB高官)という側面もある。
パウエル議長は「早ければ5月会合で総資産の縮小を始める」と表明。金融政策の正常化を加速させる構えだ。