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西友、楽天と分離後のネットスーパー事業の絶妙な戦略変更とは

西友(東京都/大久保恒夫社長)がネットスーパーの運営体制を一新させた。楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長:以下、楽天)との共同運営から、西友単独の運営に方針転換。店舗出荷型と倉庫出荷型を組み合わせた「ハイブリッド型」から店舗出荷型単体の運営に切り替わった。西友のネットスーパーは新体制のもと、どのようなサービスとなっていくのか。事業責任者を取材した。

地道な取り組みが奏効ほぼ全店が黒字に

 西友は2018年4月に楽天と合弁で楽天西友ネットスーパー(現楽天マート:東京都/盧誠錫社長)を設立し、「楽天西友ネットスーパー」の名称で、西友の実店舗を起点とする店舗出荷型と、3カ所の物流センターから出荷する倉庫出荷型によるハイブリッド型のネットスーパーを展開してきた。

西友 経営企画本部 経営企画部部長の藤村昌平氏
西友 経営企画本部 経営企画部部長の藤村昌平氏

 体制変更を発表したのは23年12月のこと。楽天と西友の両社は合弁会社の楽天西友ネットスーパーを楽天の完全子会社とすることで合意。24年9月より、倉庫出荷型ネットスーパーは「楽天マート」に改称され、楽天傘下で運営を開始した。店舗出荷型ネットスーパーは西友が単独で運営する形態へと移行している。

 移行に伴い、西友は24年9月に楽天が運営するネットスーパーのプラットフォーム「楽天全国スーパー」で「西友ネットスーパー」を開始。ユーザーとのタッチポイントとなるスマホアプリを「楽天西友アプリ」から「西友アプリ」に切り替えた。切り替え後もユーザーの大半が離脱することなく、総アクティブユーザー数は切り替え前に比べてむしろ増加しているという。

 一連の移行について、西友で経営企画本部部長を務める藤村昌平氏は「お客さまが移行しやすい環境をつくることを責務とし、極力シンプルでわかりやすい仕組みを準備して、切り替えに備えた」と述べたうえで、「西友に対するお客さまの厚い信頼こそが軸になった」と振り返る。

 収益性も高い水準を維持している。同社によれば、24年度(24年12月期)は店舗出荷型ネットスーパーを運営するほぼ全店舗でネットスーパー事業の黒字化を果たしているという。

 藤村氏は、その要因について「人件費や配送費など、ネットスーパーにかかるコストを細分化して可視化し、改善点をしっかり分析したうえで、順序だてて計画し、PDCAを愚直に回しながら、一つひとつ地道に取り組み続けてきたことに尽きる」と話す。

 店舗では、売場での作業とネットスーパーのピッキング作業をマルチタスク化し、売場の繁閑やネットスーパーの受注数に応じて人員を適正に配置。また、ピッキング作業を標準化するためのツールや社内トレーニング用の動画なども整備した。

マルチタスクによる運営体制01
店舗出荷型の西友ネットスーパーでは、ピッキング作業の専任スタッフは置かず、ほかの売場作業を兼任するマルチタスクによる運営体制としている
マルチタスクによる運営体制02
店舗出荷型の西友ネットスーパーでは、ピッキング作業の専任スタッフは置かず、ほかの売場作業を兼任するマルチタスクによる運営体制としている

 配送についても、協力会社との検討を重ね、受注の波動に合わせた配送管理を実現している。こうした地道な取り組みの積み重ねが、高い収益性に寄与しているというわけだ。

配送エリア拡大B2Bへの展開も

 西友は「西友が身近にあるしあわせ」というミッションのもと、実店舗のあり方を「OMOサービス拠点」と定義したうえで、ネットスーパーをコンビニエンスなニーズに対応する業態として位置づけている。

 ネットスーパー単独で事業拡大をめざすのではなく、店舗商圏とその周辺のお客にリアルとネットの垣根を越えた利便性の高いOMOサービスを提供することで、実店舗とネットスーパーの併用を促し、ウォレットシェアを高める戦略だ。

 楽天との共同運営時は

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