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インドからの総輸出額1兆円超!アマゾンが進める「グローバル・セリング」とは何か?

米アマゾン(Amazon.com)は、小売業者向け輸出支援事業において、2025年までにインドからの総輸出額を200億米ドル(約2兆9000億円)にする計画を立てている。アマゾンのグローバル・トレード部門担当ディレクターのブーペン・ワーカンカー氏がロイター通信に対し、今後の意気込みを語った。

インドで10万社超の小規模事業者を囲い込み

 ワーカンカー氏によれば、アマゾンではインドで10万社以上の小規模事業者を同社プラットフォームに追加し、海外顧客に幅広い製品を提供している。これまで海外市場にアクセスできなかった同国の小規模出品者は、アマゾンのプラットフォームを活用し、年間70%の事業成長を達成している。有料プログラム「プライム(Prime)」の会員が世界中に2億人以上いることや、アマゾンが提供している物流サービスがこれら輸出業者に受け入れられているという。

 アマゾンはインドでの輸出事業を加速させるため、24年3月31日までに登録した業者に対して、「グローバル・セリング(Global Selling)」と呼ぶ海外販売プログラムの利用料金を月120米ドル(約1万7400円)から1米ドル(約145円)に減額する措置を取っている。

世界20カ国に展開する「グローバル・セリング」

アマゾンのグローバル・セリング(Global Selling)事業のウェブサイト

 アマゾンは出品者の販路拡大策としてグローバル・セリングを提供しており、インドでも15年から展開している。インドで同プログラムを開始してから総輸出額が10億米ドル(当時の為替レートで約1070億円)に達するまでに3年かかった。しかし、その後のほぼ1年半で2倍の20億米ドル(当時の為替レートで約2140億円)を超えた。グローバル・セリングに参加し、輸出販売したインド企業は20年7月時点で約6万社になった

 現在は、インドや日本、米国、英国、ドイツなど世界20カ国への輸出に向けて展開している。インドの出品者も他国の出品者同様に、19カ国のアマゾンサイトの顧客に輸出販売できるが、なかでもインドの業者にとって最大の市場は米国である。アマゾンによれば、米国ではインド製の衣料品や皮革製品、宝飾品、家庭用品などがよく売れているという。

インド企業のデジタル化と雇用創出も約束

インドのモディ首相と会談するアマゾンのジャシーCEO(アマゾンのウェブサイトより)

 アマゾンは先ごろ、30年までのほぼ7年間でインドに150億米ドル(約2兆1800億円)を追加投資すると明らかにした。これは、インドのモディ首相が23年6月に訪米した際、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが同氏との会談で明らかにしたものだ。

 このときジャシー氏は、モディ氏に対してインド企業の支援に取り組むと説明。①輸出額200億米ドルの実現、②小規模企業1000万社のデジタル化支援、③200万人の雇用創出の3つについて、25年までに達成させる計画を示した。

 アマゾンのインド事業では上述の①について小売事業者向け輸出販売事業における総輸出額が70億米ドル(約1兆200億円)超に達した。②に関しては小規模企業620万社超のデジタル化を実現している。さらに③については直接および間接雇用の人数は130万人以上に達した。ジャシー氏は計画について、「25年までの目標達成に向けて順調に進んでいる」と強調した。

 アマゾンは04年にインドで事業活動を開始し、13年に小売事業を始めた。それ以降同社はインド事業に積極投資を行っており、23年6月に明らかにした追加投資で30年までの投資額は計260億米ドル(約3兆7700億円)になる。

 追加投資の大部分はクラウドサービス事業に充てるもようだ。だがアマゾンはインドのEC事業にも力を入れており、以前にも65億米ドル(約9400億円)の対インド追加投資を明らかにしていた。これにより、米ウォルマート(Walmart)傘下のインドのフリップカート(Flipkart)などに対抗する構えだ。フリップカートはインドのEC大手で、同程度の市場シェアを持つアマゾンとともに2強として知られる。