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NTTドコモとメルカリが業務提携、モバイル決済の勢力図はこう変わる?

NTTドコモ(東京都)とメルカリ(東京都)、メルカリ傘下のメルペイ(東京都)の3社が、業務提携することを発表した。今後、モバイル決済の加盟店共通化、ポイントの一部共通化、サービスのアカウント連携など幅広い領域で協業をスタートするという。ねらいは何か――。

(左から)メルカリの山田進太郎CEOとNTTドコモの吉澤和弘社長

 

両社が業務提携

 「メルカリとドコモが提携」――。

 通信キャリアとフリマアプリの最大手同士がタッグを組む。一部のドコモショップにおいて、フリマアプリの利用方法を教える「メルカリ教室」を開催したり、メルカリ出品者が商品を梱包・配送する専用コーナー「つつメルすぽっと」を設置したりするなど、かねてより協業関係にあったメルカリとNTTドコモ。提携に至った背景にあると見られるのが、モバイル決済のさらなる拡大だ。

 NTTドコモが自社決済サービス「d払い」をスタートさせたのは20184月のこと。通信料金の値下げや人口減少に伴うユーザー数の伸び悩みにより、同社の“本業”である通信事業は低調だ。201月末に発表した第3四半期決算でも「通信事業」セグメントは減収・営業減益に沈んでおり、第2の収益柱の育成は急務となっている。その筆頭として同社が目下力を入れるのが、決済の領域である。d払いの最新のユーザー数は2200万人と、最大手とされる「PayPay」(2300万人超)に迫る規模となっている。

 一方、メルカリも192月に自社決済サービスの「メルペイ」をスタートしている。フリマアプリ「メルカリ」は、月間アクティブユーザー数1450万人(1911月時点)、年間流通総額は4902億円(196月期末)を誇る。このフリマアプリに続く、新たな成長の柱に据えるのがメルペイというわけだ。メルペイのユーザー数は約600万人(201月時点)。

 19年には「LINE Pay」「au PAY」とともに、加盟店の相互開放などを目的とした「Mobile Payment Alliance (MoPA)」を結成するなど、一時は順調に拡大路線を突き進むと思われた両サービス。だが、19年末にZホールディングス(東京都:旧ヤフー)とLINE(東京都)の経営統合が発表されたこともあって、19 12月にMpPAは活動を終了。両社の決済の拡大戦略は見直しを迫られた。

 同じ12月には、「au PAY」と共通ポイントの「Ponta」の合流が発表されるなど、モバイル決済をめぐる勢力図は急速に変化している。決済サービスが淘汰・統合に向けて進む中、決済事業を再強化し立て直しを図る――。今回の提携は、こうした両社の思惑が合致したものと思われる。

決済サービスの連携がカギ

 さて、今回の提携内容で注目したいのは、主に3点。①「メルカリID」と「dアカウント」連携による顧客基盤の拡大、②dポイント連携、③スマホ決済事業の連携である。

 1つめから見ていくと、NTTドコモとメルカリの両社は、205月をめどに両社の会員サービスのアカウントである「dアカウント」と「メルカリID」を連携する。これにより、メルカリは、NTTドコモが強みとするシニア層がフリマアプリを利用することが期待できる。一方のNTTドコモは、「メルカリ」を利用する若年層へポイントサービス「dポイント」の利用を促していく考えだ。

 2つめの「dポイント連携」では、フリマアプリの利用で、dポイントが貯まるようにする。メルカリでの取引100円(税込)ごとにdポイント1ポイントが付与され、1ポイント1円でメルカリ上の売買で利用できる。

 3つめの「スマホ決済事業の連携」では、「d払い」と「メルペイ」それぞれのウォレットの残高およびポイント残高を連携する。d払いは136万カ所、メルペイは170万カ所(iD対応店含む)ある加盟店を相互開放し、どちらの加盟店でもサービスを利用できるようになる。また、今夏には両社共同で加盟店開拓営業を進める計画だという。

 

新しいサービスの提供につなげていく

 今回の提携について、NTTドコモの吉澤和弘社長は「相互のサービスがより使いやすいものになる。アカウント、ポイント、ペイメントを連携することにより、どこからでもおトクな体験が享受できる」と話す。

 今後、メルカリとNTTドコモの両社が決済サービスの手数料などについて協議していくという。

 メルカリ社長CEOの山田進太郎氏は、「各社のアセットを連携し、新しい価値や体験を提供する」とコメント。今後は両社のデータを活用した、マーケティングやフィンテックサービス、販促サービスなどの提供につなげていくとしている。

 

 モバイル決済事業において協力体制を取った両社だが、吉澤社長は「あくまでも双方のサービスを連携し、ユーザーの利便性を図るだけ。資本提携は考えていない」とコメント、資本提携の可能性は否定した。「d払い」「メルペイ」についても統合はせず、それぞれのサービスを維持する方針を示している。

 「サービスの充実や利用者拡大のために、他社ともオープンにパートナーシップを組んでいく」(山田社長CEO)。メルカリは20 1月、傘下のメルペイを通じて決済サービスのOrigami(東京都)を買収すると発表しており、今回の提携により、「メルペイ」「d払い」「Origami Pay」の三社連合が誕生することになる。

 次なる大型提携はあるか――。昨年に続き、20年も「決済」から目が離せない状況が続きそうだ。