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決済から読み解く流通争奪戦2 「第2回キャッシュレス意識調査」の驚きの結果とは!?

日本のキャッシュレスが急速に進む中、さまざまな生活者視点の実態調査を見かけますが、キャッシュレス決済手段を導入する加盟店視点に立った実態調査は、あまり目にすることがないのではないでしょうか。
そこで、中小事業者(ショップ)のキャッシュレスに対する意識について、インターネットで調査を実施しました。電通と筆者が代表を務めるNCB Lab.の共同調査で、サンプル数は355件です。
今回は、決済領域を中心としたマーケティング支援を行う、ビジネス共創ユニット「電通キャッシュレスプロジェクト」を主宰する吉富才了(よしとみ・まさのり)氏との対談形式で、ショップの調査結果をレポートします。

小売を含めた中小事業者の約半数がキャッシュレス化!

吉富:佐藤さん、中小事業者(ショップ)を対象としたキャッシュレス意識調査は、昨年に続き2回目になりますが、今回の調査で特筆すべきことは何でしょう。

佐藤:中小事業者のキャッシュレス導入率が49.6%になったことです。前回調査時(18年10月)のキャッシュレス導入率は34.6%。3分の1だった導入率が、この1年で約2分の1になりました。中小事業者のキャッシュレス加盟店化は難しく、なかなか進んでこなかったのですが、大きく伸びたと言えるでしょう。

吉富:ショップの規模などによって、キャッシュレス決済導入率に差はありますか。

佐藤:はい、従業員数が多くなればなるほど、キャッシュレス決済導入率が高くなっています。従業員が6人以上の場合は、69%が導入済み。売上でも年商1000万円を超えた事業者の65%が導入済みとなっています。
経営者の年代で見てみると、70代が27%と、とくに低いという結果も得られています。今後はこうした高齢の経営者に対して、キャッシュレス決済の利便性を丁寧に説明していく必要があります。

加速する飲食業のキャッシュレス化

吉富:業態別に見るとどうだったのでしょうか。

佐藤:小売業(156件)と飲食業(199件)の2つのセグメントで調査しました。小売業は46%だったのですが、飲食業では54%と過半がキャッシュレスを導入していました。

吉富:2018年の調査では、たしか飲食業の導入率は低く、小売業は44%、飲食業は28%でした。それが今回の調査では、小売業は44%から46%に微増。飲食業は28%から54%に倍増していますね。

佐藤:はい、飲食業の伸びは顕著ですね。前回の調査と比較してキャッシュレス導入率が大きく伸びたのはどんなところでしょう。

吉富:小売業で大きく伸びたのは、酒類販売(9%→37%)と各種食料・飲料品販売(10%→31%)でした。飲食業では、喫茶店(2%→51%)と居酒屋・レストラン(39%→65%)です。

佐藤:酒類販売や居酒屋・レストランの客単価は高いので、5%還元を打ち出せば、消費増税のハードルを引き下げられます。だから導入に積極的というのは理解できます。しかし、各種食料・飲料品販売や喫茶店の導入が進んだというのはなぜでしょう。

吉富:モバイル決済事業者の努力の結果だと思います。今回の調査では、具体的にどんな決済手段を導入しているかを聞きました。キャッシュレス決済を導入している各種食料・飲料品販売の決済手段を見てみると、モバイル決済が80%、カード決済が60%でした。キャッシュレス決済を導入している喫茶店では、100%がモバイル決済を導入しており、カード決済は22%だけでした。

佐藤:PayPayやd払い、メルペイ、au Pay、LINE Payなどの加盟店営業部隊が頑張っているということですね。たとえばPayPayは、「まちかどペイペイ」というキャンペーンを打ち出し、日本全国の商店街を盛り上げています。メルペイは「商店街ジャック」という施策で、原宿の「竹下通り」や高円寺商店街、巣鴨の地蔵通りなどを一気に加盟店化しています。

吉富:モバイル決済事業者各社は、商店街の八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん、そして喫茶店など中小ショップを加盟店化にすることに心血を注いでいます。こうした努力の積みかさねが、成果につながっているのではないでしょうか。(次回へ続く)

佐藤 元則

1952年生まれ。関西学院大学卒。1989年にカード・決済の専門コンサルティング会社、アイエスアイを設立。日本初の自由返済型クレジットカードや国際ブランドつきデビットカード、世界初のバーチャルプリペイド発行システムを開発するなど決済の領域で多数の実績を持つ。1997年から日本カードビジネス研究会(現NCB Lab.)代表に就任。現在に至る。セミナーやコンサルティング、執筆稼活動に精力的に取り組んでいる。

日本初、キャッシュレス&フィンテック専門Webライブラリ

約30年間蓄積してきたコンサルティングノウハウをもとに、世界中で進むキャッシュレスやフィンテックの動向をレポート。金融・決済の本質を見抜くための情報が揃ったWebライブラリ

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※このプロフィールは、DCSオンラインに最後に執筆した時点のものです。

吉富 才了(よしとみ まさのり) 

電通 ビジネス共創ユニット キャッシュレスプロジェクト 米系コンサルティング会社、欧州系投資銀行を経て、電通入社。 金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。 「金融破壊者たちの野望」(東洋経済新報社)「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。 日本証券アナリスト協会検定会員

※このプロフィールは、DCSオンラインに最後に執筆した時点のものです。