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ウサギオンライン3年連続2桁成長!若い女性の心をつかむ手法とは

マッシュホールディングス(東京都/近藤広幸社長)傘下のEC事業会社で「オンラインデパートメントストア」を掲げるウサギオンライン(東京都/須藤誠社長)が20代中盤~30代前半の若い女性の心を捉え、着実にファン層を拡大している。マッシュグループが展開する自社ブランドの洋服だけでなく、服飾雑貨やコスメ、食器など生活を彩る商品を幅広くそろえ、女性のライフスタイルに寄り添った品揃えなどが受け入れられている。

19~21年度はコロナ禍の消費変化で毎年2桁増

ウサギオンラインサイトトップ

 マッシュグループは1998年にグラフィックデザイン会社として創業し、2005年にファッション事業に参入。ストリート×フォーマルをコンセプトとする「スナイデル」、ルームウエアの「ジェラート ピケ」をはじめ、「フレイ アイディー」「リリー ブラウン」「ミラ オーウェン」といった自社ブランドのウエアを展開。生活雑貨やコスメ事業、飲食事業なども営んでいる。

 ウサギオンラインは20133月に設立。自社(グループ)のブランドを中心に、店頭と同等のサービスを提供するグループのECサイトとして立ち上げた。当時のファッション業界ではZOZOTOWNFASHION WALKERといったECモールに出店するのが主流だった。

 現在は自社ブランドを中心に、グループ外のブランドも取り扱い、サイト内に合計70を超えるブランドのアイテムを掲載。2021年度(20218月期)の売上金額は61.2億円、サイト訪問者(ユニークユーザー)数は月平均約230万に上る。

 ここ数年の売上高は前年に比べ2019年度は10%増、2020年度は13%増、2021年度は23%増と3年連続で2桁の伸びを見せた。「コロナ禍でお客さまの購入体験が変わり、ECで買う方が増えた。店とECを買い回るお客さまも増加している。2021年度のファッション事業のEC化率は35%に達した」と須藤社長は話す。特に在宅時間が増え、家の中で快適に過ごす「イエナカ消費」にフィットしたルームウエアの「ジェラート ピケ」が急伸した。

若い女性のライフスタイルに寄り添った品揃え

オンライン限定アイテムとして2022年最も売れたスナイデルのワンピース

 ウサギオンラインは自社ブランドの洋服だけでなく、服飾雑貨はもちろん、マッシュグループが展開する「コスメキッチン」「エッフェオーガニック」などを含めたコスメや食器、食品、直輸入のワイン、カルチャーマガジンまで、生活を彩るアイテムを幅広く提案。マーケットの中心である20代中盤~30代前半の女性のライフスタイルに寄り添った品揃えに注力している。

 「お客さまのライフスタイルに寄り添い、楽しんでもらえる商品や、新しいブランドを探している」と須藤社長。

 マッシュグループではブランド毎に直営ECサイトも開設しているが、これは「デジタルマーケット上の路面店」と位置付ける。一方、ウサギオンラインは「セレクトショップ」としての特性を生かし、例えばドレスやコートなどのカテゴリーを定め、グループ内のブランドを横断してコーディネーションする独自企画を時機に応じて展開する。

 「お客さまには季節に応じたトップスが欲しいとか、結婚式に着ていくドレスが欲しいとか日々の生活の中でライフシーンがある。百貨店の特設会場における催事のように、ウサギオンラインでブランドを横断した企画を展開することは、お客さまのニーズに応えることになる」と須藤社長は説明する。

 こうしたサイトでのチャレンジや限定商品の展開、独自の企画提案などが功を奏し、ファン層が拡大しているようだ。

リアル店舗は前期末から倍増へ

須藤誠社長

 上海や中国全土のロックダウン(都市封鎖)によって商品の入荷が遅延し、4月以降の売上が苦戦した。ただ6月上旬に上海のロックダウンが解除され、港や工場に滞留していた商品が動き始め、7月に夏物の配送がほぼ全て終わったことから、今後は通常稼働が期待されている。

 同社が運営するリアル店舗「ウサギオンラインストア」はサイト立ち上げと同時に数店出店したが、その後は停滞していた。だが228月期は一気に5店(フランチャイズ店を含む)を出店し、期末には10店と前期末に比べ倍増する。昨年9月に静岡パルコ(静岡市)と遠鉄百貨店(静岡県浜松市)、今年4月にTフェイス(愛知県豊田市)とカメイドクロック(東京・亀戸)に出店した。8月にはグランツリー武蔵小杉(神奈川県川崎市)にもオープン。標準売場面積は3040坪。

 「サイトでは関東、関西、九州在住者の購入が6割以上を占め、都市部に集中している。主要都市以外のお客さまにもより周知していきたい。今後はそういった都市にも積極的に出店したい」と須藤社長はリアル店舗の拡大に意欲的だ。

 リアル店では客とのタッチポイント(顧客接点)としての役割を重視し、ブランド販促などに取り組む。ファッションだけでなく時にはキャンペーン企画でアーティストと組み、ポップアップ(期間限定)で絵画を販売するなどカルチャー提案もする。

 今後はサイト内の検索機能を高め、客が自分のサイズを入力すれば適した商品がリコメンド(推奨)されるなど「検索を通してお客さまが常に新しい発見に出会えるような仕掛けをどんどん盛り込みたい」(須藤社長)

 また来年は事業開始10周年を迎えることから、ファン客に感謝の気持ちを伝える顧客イベントやキャンペーンを準備、新規顧客を獲得する仕掛けを考えているという。

 なおサイト内のメンズの売上は「ジェラートピケ オム」など数%にとどまる。ただファッション事業を担うマッシュスタイルラボが今春ビジネスマン向けの新ブランド「アウール」と「ソフトハイフン」(同社の「ミスター・ジェントルマン」を名称変更)をデビューさせたこともあり、今後はメンズも拡大したい考えだ。

4月にカメイドクロック1階に開店した都内2店目のリアル店舗「ウサギオンラインストア」