スギホールディングス(スギHD)が発表した2023年2月期決算は、連結売上高は6676億4700万円(前期6254億7700万円)、営業利益は316億5800万円(前期321億3700万円)、経常利益は323億9100万円(前期330億8200万円)、親会社に帰属する当期利益は190億700万円(前期193億8900万円)だった(23年2月期より収益認識に関する会計基準を適用しているため直接の前期比比較なし)。
薬価報酬改定による影響あるも
物販の売上総利益率は大きく改善
スギHDの連結売上6676億円は計画に対し 98.9%と未達となるも、営業利益は 316億円で、計画に対して 105.5% と上回った。
スギHDは24年2月期、売上高7245億円(対前期比8.5%増)、営業利益330億円(同4.2%増)、経常利益345億円(同6.5%増)、親会社に帰属する当期利益200億円(同5.2%増)を見込む。その際、既存店売上高は通期で3.5%増、新店120、退店20を計画している(いずれもグループ計)。
23年2月期の詳細を見ると、調剤売上は、処方箋枚数が2桁増(10.1%増)で伸長したことで、対前期比7.3%増となった。しかし、昨年4月の薬価報酬改定によるマイナス影響で、処方箋単価が同2.5%減と、想定以上に下落し、売上計画には4.1%未達だった。それでも調剤室や待合室の拡張・改装、お薬手帳アプリのダウンロードを促進するなどの施策が奏功し、既存店ベースでもプラスとなった。
物販は、ヘルスケアが対前期比で9.5%増となるなど物販全体の売上が同6.7%増となり、好調を維持、予算も上回った。売上総利益率も全部門が改善し、物販計で0.6pt改善する28.4%となった(予算には0.2pt未達)。なおカテゴリー別の売上総利益率は「フーズ」+0.5pt、「ビューティ」+1.4pt、「ヘルスケア」+0.8pt、「ホーム」+0.9ptだった。
この結果、グループ既存店売上高は3.1%増、内訳は客数2.5%減、客単価5.7%増だった。これら堅調な既存店に加え、後述する旺盛な新店効果もあり、前期と比べて大幅に売上を積みました。
販管費については、インフレ下でコストが上昇する中でも、計画内でコントロールしたことで高い収益性を維持した。
厳しい環境下でもDXを着々と推進
スギ薬局アプリは1000万DL突破
ドラッグストアを取り巻く環境は、薬価・調剤報酬改定の影響による処方せん単価の下落や一部調剤報酬の大幅な引き下げ、出店競争のさらなる激化など、厳しさを増している。そうした中で、スギHDはブレることなく着々とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進している。
象徴的な存在が、スギ薬局アプリだ。同アプリは1000万ダウンロードを突破しており、既存顧客を定着させるツールとして有効に機能している。
同社は他にも歩数計アプリ「スギサポwalk」、処方箋を電子送信できる「スギスマホでお薬」も展開。ユーザーの購買データから健康関連データまで多様なデジタル接点を揃えている。
複数アプリのID統合で顧客とのデジタル接点を最大化
昨年4月にはバラバラだったこれらのIDを統合。使いづらさを解消することで、利便性を向上させている。これにより、各アプリのさらなる利用促進が期待される。
今年 1 月には、スギ薬局アプリをリニューアル。顧客特性に合わせたクーポンや記事の配信で、さらに訴求力を高めた。見据えるのは、2年後の25年2月期に1400万ダウンロード。現状の1.4倍となるダウンロード数を見込み、DXをさらに加速させる算段だ。
デジタル活用シーンにおける顧客接点を増やすことは、そのままデータ収集の最大化につながる。ユーザーの嗜好や行動、健康状態のタイムリーな把握が可能になり、そうなれば、販促はもちろん、同社が目指すトータルヘルスケアの完成形へもグッと近づく。
化粧品部門でもデジタル化を推進
デジタル化は化粧品部門でも推進。収集データを最大限に活用し、美容カウンセリング履歴をよりユーザーに適したのアドバイスへ応用。顧客満足度のさらなる向上につなげる。
23年1月からスタートした電子処方せんへの対応も抜かりない。対応可能な店舗網の整備も積極的に推進し、併せて人材育成も一層強化。医療機関との円滑な連携により、調剤薬局としてのより高品質なサービス提供を実現する。
DXによる環境整備は、ドラッグストアが抱える課題解決にもリンクする。データドリブンでユーザーに寄り添った、よりきめ細かなサービスの提供や提案が可能になるだけでなく、業務効率化により、専門性を生かす人材の最大化なども強力に後押しする。
並行して、出店も引き続き精力的に行う。23年2月期は107店舗を出店し、25店舗を閉店。既存店舗では244店舗を改装し、リアル場面での競争力を高めた。
リアルとデジタルの境界線をなくし、地域に不可欠な生活拠点へ
デジタル接点で顧客データを収集・分析し、リアル店舗では直に顧客の不便を解消するーー。これらはまさにオンラインとオフラインを統合するOMOであり、トータルヘルスケア実現を目指す同社にとって肝となる重要なアクションに他ならない。
購買状況や生活状況から健康状態を予測し、来店した顧客からその顔色や相談内容から心身の状況や変化を確認する。そんなサイクルが確立されれば、同社は小売の域を超え、まさに「セルフケア領域」「医療・服薬領域」「介護・生活支援領域」をカバーする、地域に不可欠な生活拠点へと進化を遂げることになる。
激化する競争環境の中で、そうした未来像をはっきり捉えながら、スギHDは前進と進化を続けていく。