コロナ禍での急激なニーズ拡大を背景に、ネットスーパーの展開に乗り出す食品スーパー(SM)企業が増えている。自社開発や大手プラットフォーマーとの協業など、ネットスーパーの展開体制は企業によってさまざまだが、ここ数年、大手~中堅チェーンで続々と導入が進んでいるのが、10X(東京都)が提供する小売ECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」だ。本稿では、矢本真丈社長CEOにネットスーパー黒字化のポイントを聞くとともに、昨年にStailerを導入したデリシア(長野県/萩原清社長)のネットスーパーの取り組みをレポートする。
快適な買物体験を提供する10XのStailer
メルカリ(東京都/山田進太郎CEO)のグループ企業出身のメンバーが中心となり2017年に設立した10Xは、小売のEC構築支援を手がけるスタートアップ企業だ。10Xが提供する小売ECプラットフォームのStailerは、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)やイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)などの有名チェーンが導入していることでも知られ、直近では22年9月にデリシア、同12月には平和堂(滋賀県/平松正嗣社長)がそれぞれ導入。23年3月現在、9社の約500店舗で運用されている。
Stailerにはさまざまな機能があるが、その中でも特徴的なのは商品在庫マスタの自動生成を可能にし、ネットスーパーと店舗の売場を連携できるという点だ。Stailerの導入を通してネットスーパーが抱える課題を解決に導く10Xの矢本社長は、「ネットスーパー事業を黒字化させるためには、注文単価と注文数を上げて粗利益高を増やすことが重要だ」と話す。
ネットスーパーの注文単価を上げるには、総菜や日配品などの毎日消費する商品が要となる。現状、ネットスーパーでよく売れるのは水や米などの重くてかさばるものが中心で、総菜や日配品を購入するお客が多いとは言いがたい。それらを購入するお客を増やすには、商品数を増やしたり、欠品状態を減らしたりすることでお客の“信頼”を勝ち取ることが重要だという。
しかし、多くのネットスーパーでは欠品が頻繁に見られ、総菜に関してはそもそもサイトに掲載されていないというケースも多い。こうした状態を解消するためには、
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