東北6県にドラッグストア(DgS)390店舗(2024年7月末時点)を展開する薬王堂(岩手県/西郷孝一社長)。同社は今秋、小売業における施策の効果検証を可能にする購買行動分析プラットフォーム「薬王堂PBMA」の本格稼働を予定している。薬王堂だからこそ効果検証できる理由、データから見えてきた可能性、そして今後の青写真を、西郷社長に語ってもらった。
PBMAの実施に乗り出した背景
薬王堂が、集約されたさまざまなデータに基づき小売業における施策の効果を可視化し、検証する「薬王堂PBMA」(以下、PBMA)を開始する。PBMAとは、「Pur-chase Behavior Modifi-cationAnalytics」の頭文字をとったもので、「購買行動における行動変容分析」を意味する。
PBMAを実践するに先立ち、同社では、データサイエンティストとインターン生からなるデータサイエンスチームと長期的に連携し、購買情報、販促情報、売場情報、在庫情報などのデータを一元化してきた。これにより、施策の効果検証のベースとなるデータ分析基盤が構築された。
背景には、大手消費財メーカーに在籍していた経験があり、小売とメーカーの両方の視点を併せ持つ西郷社長の、こんな課題感があった。
「メーカーが売価を出して広告を打ったり、店舗が販促を展開したりと、小売の現場ではさまざまな立場からさまざまな施策が打たれる。だが、いざ効果検証となると、自分が行ったアクションについて、それぞれの立場で“自らに都合のいい効果”を検証しているのが現状だ。各施策の丁寧な分析や施策同士の相関分析はほとんどなされない。丁寧な効果検証ができないから、前年の施策にプラスアルファしただけの施策が繰り返される。メーカー側も小売業側もお互いの状況がわからないまま、表面上だけを検証していても意味がない」(西郷社長)
そんな現状を打破するべく、薬王堂は5 年ほど前からPBMAの第一歩となるデータの整理に着手した。小売業には膨大なデータが集まる。一方で、膨大なデータを統一的なルールのもとで入力し、1カ所に集約して分析可能な状態にするには、途方もない労力を要する。店舗ごとに売場と販促が異なり、無数の施策が同時進行している企業では、そのハードルはさらに上がる。
その点、標準化された売場、統一的な販促を徹底する店舗運営スタイル、売価の変動を最小化したEDLP(エブリデイ・ロープライス)政策を特徴とする薬王堂は、ほかのDgS企業と比べてデータが管理しやすい条件が備わっていた。
「当社はEDLPで売価も固定しているし、プロモーションコーナーやサイドネットの半分以上は半年~3年間、商品展開を変えない。アクション数が少ないぶん、変数が少ないので効果検証がしやすい」(西郷社長)
“変数”を反映した予測モデルづくり
PBMAの一環として薬王堂は、データサイエンスチームにメーカーを加え、個別の施策について効果検証する「データハッカソン」を実施している。検証結果は
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