長引くコロナ禍の中、本部でテレワークを採用したいが、どうやればよいのかわからないという小売企業が多い。グッデイがどのようにテレワークを成功させたのかを柳瀬隆志社長が解説する。
テレワークを約半年継続
グッデイがテレワークを導入することを決めたのは3月30日の臨時の部長会議でした。財務や総務など社内システムを使わないといけない部門を除き、本部社員は翌日から全員テレワークとなりました。それ以降、今に至るまで、ずっとこの働き方が続いています。
若くてデジタルに詳しい層だけでなく、年齢層問わず全員が対象です。取締役会、部長会議も基本的にはすべてオンラインで行い、4月以降、対面では一度も行っていません。
スムーズにテレワークを始めることができたのは、前回に述べたように、2015年からクラウドサービス「G Suite」を導入していたことが大きいです。以前から会議を「Google Meet」で行うこともありましたし、資料も「Google Drive」で共有していたため、テレワークになったところで大きく変わりませんでした。勤怠管理も「Googleカレンダー」でそれぞれのメンバーの予定を共有しています。
書類についても以前からペーパーレスに取り組んでいたため、資料を会社に取りにいかないといけない、というようなことはありませんでした。
ですので、テレワークに移行するにあたって、新たに導入したものは少なく、契約書の電子署名ができるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)「クラウドサイン」くらいです。今後もできるだけ会社でしかできない仕事を減らすために、バックオフィス系のSaaSの導入は検討していきます。
テレワークに移行してから変わったのはオフィスの役割についての考え方です。私も基本的にはテレワークでオフィスに来ていないのですが、初めてお会いする方との面会するときに出社することがほとんどです。経営企画、マーケティング部といった部門のメンバーもほとんど来ておらず、家で仕事をしづらい人が集中して仕事をする場所として使ったりしています。
テレワーク移行でスムーズにいかなかったこととして、相手先が慣れていないということがありました。取引先説明会をオンラインで行った際に、こちらの要因ではないものの、接続が切れたりすることがありました。
店舗の対策に集中できる
テレワークに移行して最も大きなメリットと感じているのが、店舗のコロナ対策に専念できることです。いまだに本部が会社に出社して、「密」な状態で仕事をしていれば、本部でクラスターが発生してもおかしくはありません。しかし、ほとんどの社員がテレワークに移行している今、本部でクラスターは発生しえないので、店舗の対策に専念することができます。
台風などの自然災害発生時も、以前のように出社していたときには、本部社員も出社するかどうか決める必要がありましたが、今では全員在宅で、店舗の安全確保に集中することができます。
また、これからはテレワークが可能かどうかということが、求職者にとっても会社を選ぶ1つの基準になると思っています。大学生は授業がオンラインということが当たり前の環境を過ごしています。むしろ、テレワークができないという環境が信じられない、という感覚の学生も増えているようです。
グッデイでは3~4年前から似たような環境をつくってきたので、違和感なく移行できましたが、社員が慣れるには時間がかかります。しかし、このようなテレワーク中心の働き方はしばらく続くと思っています。当社は引き続きITへの投資を優先していきます。