2019年10月にリリースされたLINEチラシをいち早く導入したウエルシア薬局。同社はアナログの折込チラシにはないデジタルならではの即時性を高く評価している。同社の販促企画を束ねる清田明信氏、LINEの江田達哉氏に、導入の背景と成果、今後の展望について話を聞いた。
―― はじめに、お二人の職種と担当領域についてお聞かせください。
清田 販促企画部の責任者としてチラシ、POP、Tポイント、TVCM、デジタル販促など、販売促進に関わる業務を外部と連携しながら行っています。
江田 広告事業本部のOMO(Online Merges with Offline)販促事業推進室の室長として、ネットとリアルの垣根を超えた販促領域に関する事業企画を担当しています。
―― 2019年10月にリリースされたLINEチラシのサービス概要を教えてください。
江田 LINEチラシは、LINEアプリ内に掲載されるスマートフォン用に最適化されたデジタルチラシサービスです。ユーザーにアプリインストールや会員登録をさせることなく、チラシ情報を配信することができます。配信対象はLINEユーザー8600万人(2020年9月時点)で、ユーザーが「お気に入り」として店舗を登録すると、企業や店舗のLINE公式アカウントの友だちとしても追加されます。
LINE公式アカウントとの連携によって、ユーザーに対して様々な形で情報を発信することができるほか、アナログの折込チラシでは難しかった効果計測も準備している最中です。
―― ウエルシア薬局では19年11月にLINEチラシを導入していますが、そのきっかけについて教えてください。
清田 近年、新聞の購読率は減少傾向にあり、それに比例して折込チラシの効果も下がりつつあります。当社では長年折込チラシを中心に販促を行ってきましたが、経費も掛かる上、費用対効果が分かりにくい面があります。
また、折込チラシは配布する地域ごとに内容を調整する必要があり、製作にも約7週間を要します。新店や知名度の低い土地柄では特に効果が高いのですが、新型コロナウイルスのような非常事態が起きた時、すぐに対応することが難しいという課題がありました。
その点、LINEチラシは急な変化にも対応できるデジタルならではの即時性、費用対効果が可視化できる点に魅力を感じて導入を決めました。
―― LINEチラシの成果についてどうお考えですか?
清田 初動は芳しいとは言えず、LINE様にも修正希望点を伝えて対応していただきました。その後、コロナ禍で生活者のマインドが大きく変化した20年4月以降は数字も格段に良くなり、8月の月間PV数は400万(※)にまで達しています。
※LINEチラシでの月間PV(ウエルシア薬局全店舗)
江田 ウエルシア薬局様にはローンチした初期段階に導入していただき、LINEチラシの成長をそばで見守ってくださったと感謝しています。少しづつ改良を重ね、ご期待に沿えることが出来てきているのは大変嬉しく思っております。
―― ウエルシア薬局様はLINEチラシのほか、LINE公式アカウントも活用されていますが、それぞれの使い分けや目的について教えてください。
清田 LINE公式アカウントはマスメディアに近く、LINEチラシも今のところはマスに近いですが、今後はよりパーソナルな方向にシフトさせたいと考えています。当社はROI(Return on investment:投資利益率)を重視しており、現状、規模は小さいですが、LINEチラシはその基準に達しています。一方、折込チラシも継続的に活用していくつもりですが、販促におけるデジタルの割合は年々増加しており、今年になってアナログとデジタルが逆転しました。
当社のLINE公式アカウントの友だち数は直近(2020年10月)で約800万人、LINEチラシは約110万人がお気に入り店舗として登録していただいております。現状の400万PVでは折込チラシほどの成果は出ませんが、今後、LINE公式アカウントの友だちが1000万人程度まで増えれば、折込チラシと同程度の成果が見込めると考えています。
―― LINEというプラットフォームで販促施策を行うメリットは何でしょうか?
清田 ユーザー8600万人という規模感はもちろん、プッシュ機能やビーコンなど、豊富な選択肢がある点です。組み合わせの多彩さ、即時性を持ってフレキシブルに対応できる点はLINEならではの強みではないでしょうか。
―― LINEでは今後「LINEで応募」や「LINE POP Media」といった販促向けのサービスをリリース予定ですが、サービス概要とその狙いについてお聞かせください。
江田 「LINEで応募」は、誰でも簡単に応募できるキャンペーンプラットフォームです。キャンペーンの応募忘れを防ぐリマインド機能、次回キャンペーン案内等のフォローをLINE公式アカウントからメッセージ配信することが可能です。既存のはがき応募キャンペーンやWEBキャンペーンに替わる手段として有効です。
「LINE POP Media」は、LINE Beaconを活用し、アナログのPOPや店頭配布のチラシを代替するデジタルPOPです。LINEチラシが店の外にいるお客様を対象とするのならば、LINE POP Mediaは店内にいるお客様を対象にお得な情報を伝えるためのものです。店内でLINEアプリを開かない場合でも、来店者にLINE公式アカウントからメッセージを配信しておくことも可能です。
LINEでは店外でLINE広告やLINEチラシ、店内ではLINE POP Media、購買の後押しにLINEで応募、再購買を促すLINE公式アカウントからのメッセージ配信といったように、一気通貫した販促施策をサポートすることが可能になりました。さらに、リアルな世界でユーザーの行動を把握し、ユーザー1人1人の状況に合わせて最適なタイミングで最適な情報を届ける「状況ターゲティング」が実現しています。
―― 最後に、今後のLINEに期待することについてお聞かせください
清田 最終的にはOne to Oneマーケティングを目指してほしいと考えています。自社のIDとLINEアカウントを紐づけ、購買履歴を活用することで、より高度なリコメンドもできるのではないでしょうか。特にLINEは圧倒的なユーザー数を持つためリーチできる幅が広い。これを生かし、ぜひLINEならではのOne to Oneマーケティングを実現していただきたいと期待しています。