2019年8月21日から23日の3日間、東京ビッグサイトにて、国内最大のシーフードショー「第21回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」(主催:一般社団法人大日本水産会)が開催された。日本国内をはじめ世界各国の水産商材と水産関連技術を紹介し、商談や情報交換の場を提供するイベントの場で、今回の出展者数840社、期間中の来場者は延べ3万3572名だった。今回はスーパーマーケットが鮮魚市場と直接取引できるスマホアプリについて解説したい。
水揚げ翌朝にはスーパー店頭に届く
「ドラッグストアや大手量販店に対抗するために、生鮮で差別化を図りたい。産地とWIN-WINの関係で、独自の産直品を効率的に仕入れられないか」
スーパーマーケットからのそんな相談がスタートだった。
魚、野菜、果物といった生鮮食品は、漁獲/収穫量、商品の状態や相場などの情報が日々大きく変動する。
全国の産地とスーパーマーケットが漁港・市場からの情報をいち早く共有し、直接取引を実現するための法人向けスマートフォンアプリが、オンライン水産市場「みらいマルシェ」(https://miraimarche.com/、開発・販売:みらいマルシェ<東京都>)だ。
「全国の漁港・市場から情報が入ってきて、全国の魚の買付ができる仕組みを構築した」
ファウンダーの土屋敬氏はそう語る。
「当初は、直接、漁師さんと情報のやり取りをする方法を考えたが、そこは水産物の売買のプロである、浜の仲買さんが適任と判断した」
これまでのところ、松江(島根県)、沼津(静岡県)をはじめ、産地仲買を中心に20社、ローカルスーパーマーケット102店舗(2019年6月現在)が、みらいマルシェ上で直接取引を行っている。取引の中心は遠隔産地もの。中四国地方で売上を伸ばしているあるスーパーマーケットも、このユーザーの一社だ。
みらいマルシェの商品の流れを見てみよう。
商品の流通に市場便を使うのが特徴だ。
時間軸にそって見ていくと、以下のような流れになる。
<商品の流れの一例>
9/1 AM7:00~8:00
出荷側(仲買)が各産地市場からセリ時間に合せて提案
↓↓↓
9/1 AM7:00~10:30
仕入側(スーパーマーケット)がスマホで順次注文
↓↓↓
9/1 AM~11:00
出荷側が発送準備
↓↓↓
9/1 AM11:30
出荷側が市場便に積み込み
↓↓↓
9/1夜~9/2明け方
仕入側の最寄り市場へ到着後、運送会社が指定場所に転送
↓↓↓
翌9/2早朝
仕入側自社便で店舗に到着
つまり、水揚げの翌朝には仕入側(スーパーマーケット)店舗に届くという仕組みだ。
漁港・魚市場からの提案商品を1ケースから注文することができ、複数の魚種を組合せることも可能。ほしい商品のリクエストもできるし、商品情報収集のために使用することも可能だ。その日の魚種ごとに浜からのお勧めの食べ方を教えてもらうことも、頻繁に行われている。
気になるのは「みらいマルシェ」の使用コストだが、導入のための初期費用、定額利用料はいずれも「0円」。あくまでも、取引が発生したら、手数料が発生する仕組みで、商品情報を見るだけではコストは発生しない。アプリ上に表示される商品単価に、市場までの配送料、アプリ利用料が、1取引にかかる総費用で、みらいマルシェからスーパーマーケットに一括請求する流れだ。
中央市場では手に入らない魚種をリアルタイムに注文できる!
直接取引というと、とかくコストの安さに関心が向くが、みらいマルシェの場合は違う。
「仕入れ値段だけでいったら、最寄りの中央市場で仕入れたほうが安くすむこともある。中央市場で手に入らない、手に入れづらい魚種でも、浜からの直接の情報で、リアルタイムに注文できるというのが最大のメリットではないか」(同)
ユーザーであるスーパーマーケットからも、「手に入らなかった魚が手に入る」、「産地との結びつきを強めていきたいと考えていたが、人も手段もないし、やりかたもわからない。それが簡単にできるようになった」といった声が届いているという。
だが、鮮度が勝負の世界であり、仲買、スーパーマーケット、場を提供するみらいマルシェの間で、相互の信頼関係が構築できなければ機能しにくい。
「いまは、仲買さん、スーパーマーケットのバイヤーさんと直接会って、この仕組みの主旨を理解していただき、お互いに『やってみよう』となったところと取引を始めている」(同)
みらいマルシェで出荷しているある仲買は
「これこそ、究極の産直じゃないかな。本当に獲れたてのものが、直接産地から届くというのが、大メリットだと思うよ」と話している。
みらいマルシェには、お互いにメッセージをやり取りできる機能も備わっている。必要なときに、リアルタイムでやり取りができるわけだ。
「アプリでの情報確認、メッセージのやり取り、それから、相互の信頼関係が深まるにつれ、電話での直接のコミュニケーションも重要になる。鮮魚の場合、すべての情報をデジタルだけで済ますのは難しい。微妙なニュアンスや、浜の活況を伝えるには、やはり直電。デジタルとアナログのハイブリッドで使いこなすユーザーが増えている」
「みらいマルシェ」がリリースされたのは約2年半前。本格的な営業開拓はこれからだというが、このアプリを利用する、産地の仲買、スーパーマーケットともに、着実に増えている。