米国のバーガーキングが、植物などを材料とする食肉代替品を使ったハンバーガーを今年から発売開始するなど、にわかにミートテックビジネスが広がりを見せている。そうしたなか、植物ではなく、牛肉の細胞から培養した食肉、いわゆる培養肉をめぐる動きも活発化している。培養肉が食卓にのぼる日は、われわれが思うよりもずっと早いかもしれないのだ。
人工肉には、食肉代替品と培養肉の大きく2種類ある
日本能率協会総合研究所が提供するMDB Digital Search(http://search01.jmar.co.jp/mdbds/)によれば、世界の人工肉の市場規模は2019年度は約1000億円。翌20年度には1200億円となり、23年度には1500億円まで拡大すると予想している。
人工肉とは、大きく食肉代替品と、培養肉の2種類からなり、前者は植物由来の主原料を使用して作ったもので、欧米では健康志向の高まりからニーズが高まっているという。一方後者は牛などの細胞を培養することによって人工的に作り出した本物の肉で、食糧不足や環境問題の解決につながるのではないかと期待されている最新フードテックの1分野だ。英語ではcultured meatと表現する。
今年3月の日経新聞の報道によれば、日本でも東京大学と日清ホールディングスなどが共同で、培養肉の作成に成功したという。ただ記事では、実用化に10年以上かかる見通しだとしている。
2013年、人工肉バーガーを作り、培養肉の概念実証を世界に先駆けて提示したのが、オランダのマーストリヒト大学のマーク・ポスト教授(プロジェクトのホームページ: https://culturedbeef.org/)。ポスト教授は、畜産システムの環境負荷を減らすととともに、動物福祉への対応、食品安全保障の提供を考える上で、重要な好影響を与えるものとして、培養肉の生産を積極的に提唱している。
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わずか3週間で牛肉が作れる!?
牛肉生産は、2年からわずか3週間に短縮!?
そんな培養肉の世界で今、注目を浴びている企業が、イスラエルに本拠を置くアレフ・ファーム(Aleph Farms)だ。動物を傷つけることなく、本物の牛肉を作ることに成功。その肉は生きた牛の細胞から培養して作った複合細胞であり、ステーキ本来の食感が楽しめるという。同社作成の動画を見ると、ごく薄切りだが、ステーキ肉片だということは疑いようもないものだ。
ウォール・ストリートジャーナルの報道によれば、このクレジットカードと同じようなサイズの薄切り人口肉は1枚あたり50ドルのコストがかかっているという。アレフ・ファームによれば通常の牛肉の生産は約2年かかるのにと比べて、細胞の抽出から培養、組織形成を経て、最短3週間で出荷が可能だと説明している。
このように培養肉は、従来の畜産のあり方を根底から覆す、確信的的な取り組みだ。食肉ゲームチェンジの日は、刻一刻と近づいていると言えるだろう。