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イオン九州とトライアルがデジタル領域で異例のタッグ! “競合の壁”を超えた協業の行方 

イオン九州(福岡県)がトライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアル)が、デジタルの領域において異例のタッグを組んだ。まずは「デジタルサイネージの共同活用」のテーマのもと、デジタルサイネージの活用手法について2社で共有・議論を進めていく。さらには九州内の物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する協業も検討しているという。いずれも九州を本拠に真正面から競合し、資本関係も一切ない2社が行く先とは—―。※記事の内容を一部修正しました

デジタルサイネージの活用手法・ノウハウを2社で共有へ

トライアルが店内に導入しているデジタルサイネージ

 イオン九州とトライアルが、デジタル領域における連携を深めている。まずは今年3月初旬にリニューアルオープンした「イオン若松店」(福岡県北九州市)において、イオン九州がデジタルサイネージを導入。デジタルサイネージの活用手法などについてトライアルとノウハウの共有を進めていく。この枠組みについては、リテールAI研究会が61日に開催した「リテールAIセミナー2022」で明らかにされた。

 同セミナーに登壇したイオン九州執行役員DX責任者兼CX推進本部長の岩下良氏によると、今年2月にイオン九州がトライアル側にアプローチしてデジタル領域での協業が決定したという。

 言わずもがな、イオン九州とトライアルは互いに、九州において真っ向から競合する存在。トライアルが北は北海道から南は鹿児島まで店舗網を持つことを考えれば、イオン九州が属するイオングループ全体にとっても大きな強敵である。しかし岩下氏は「店舗間の競争は置いておいて、小売業の生産性をデジタルの力で上げていくという同じビジョンのもとで(2社が)つながり、何かできることがないかを模索している」と説明。その端緒となる取り組みがデジタルサイネージの共同活用というわけだ。

 イオン九州柴田社長の危機感が”競合の壁”を超えた連携生む

 他方で、イオン九州がトライアルにアプローチした理由は何か。岩下氏によると、同社の柴田祐司社長のコミットメントが大きいという。人口減少や競争激化など、地方の小売業の経営環境がますます厳しさを増すなかで、「危機感を強くしていた柴田社長から、同い年でもあるトライアルの永田(久男)会長に声をかけた」(岩下氏)

 一方のトライアルにとって、イオン九州からの申し出は渡りに船であったようだ。永田会長の長男でトライアルのグループ会社Retail AIのトップを務める永田洋幸氏は、「もともとトライアルはオープンイノベーションの考えのもと、他の流通企業とのつながりを持ちたかった。まさかイオン九州さんから声をかけてもらえるとは」と頬を緩めた。

「九州の物流DX」に向けても協業へ

  もっとも、2社の取り組みは緒に就いたばかりで、サイネージの共同活用による効果測定などは今後具体的に進めていく計画。さらに2社の間には、九州内の物流の効率化をねらった「物流DX」に関する共同の取り組み計画についても検討を始めているという。

 競合の壁を打ち破り、ビジネスの革新と顧客体験向上のためのデジタル戦略において共に歩み始めたイオン九州とトライアル。異例のタッグを組んだ2社が、九州の、あるいは日本における小売ビジネスや買物行動にどのような変革をもたらすのか注目だ。