株式会社 薬王堂ホールディングス
常務取締役 経営戦略部長
西郷 孝一 氏
生き残りに不可欠な3つの数字
薬王堂ホールディングスは「東北から世界の健康をデザインする」ことを目指している。そのために様々な人々や企業とコラボレーションすることによって世界に先駆けて先進的なプロダクトやサービスを実装していく。そして世界初の成功事例を世界に発信し続け、東北を世界の健康をリードするエリアにしたい。
我々が考えている価値創造プロセスは、従来の商品を売ることが主軸のビジネスから、今後は社会課題の解決に比重を置いていく。現在、薬王堂ホールディングスの売上構成は、小売事業を担う薬王堂が99.8%を占め、ビッグデータ事業とインキュベーション事業を担うMedicaが0.2%だが、メディア化を進める中で、これからはMedicaが伸びていくことになる。
我々が考える東北エリアでこのドラッグストア事業を成長させるのに必要な数字が三つある。ひとつは既存店売上の毎年103%の達成。そして粗利率を23%に抑えること。営業利益率4%は小売事業をやる上で必須だと考えており、このために販管費比率の19%を維持していく。
この3つの数字を達成するために薬王堂がやらなければならないことは、ドミナント出店、東北エリアに出店を継続、ESLP(エブリデイ・セイム・ロープライス)、ローコストオペレーション、最後に今後の成長に欠かせない人材の採用と教育。この4つに薬王堂は注力しながら改革を進めている。
肌診断などユニークなデータを保持
今後の生き残りのカギとなるビッグデータ事業とインキュベーション事業を担うのが子会社のMedicaである。
薬王堂の強みは、中央にある<購買+健康データプラットフォーム/リアル店舗(実装フィールド)>ということになる。購買データはよくあるID-POSとそれ以外の例えば売価、ポイントなど。そして他の小売業が持っているようで持っていない売場の情報。薬王堂はどこの店舗でいつからいつまで何のエンドをやっているか、何のサイドネットの施策をやっているかというのをすべてきれいにデータ化している。実は売場情報は本当に必要な変数だと考えている。
そのきれいなデータを活かしてバイタルデータ(人体から取得できる生体情報)を扱うバイオベンチャーと組んで、血液や唾液から顧客の健康状態を把握し提供するサービスを実現した。血液一滴から血糖値、コレステロールなどの状況を把握し提供できる。さらに公式アプリと連携した肌診断AIも実装した。これについては、お客様に薬王堂の公式アプリをダウンロードしてもらい、その中にある肌診断アプリからカメラを起動してもらって、お客様自身の肌を撮影することで乾燥などの肌の状態を数値化する。それらのサービス・ツールを提供することでユニークなデータを集めている。
これからも様々な企業・スタートアップと共創
新しいツールを入れていくだけでなく、お客様の課題を解決できるツールを開発して新たなサービスを提供するのが目的だ。このような取り組みを通じて薬王堂は整理されたデータを持ち、他の小売業が持つことができないバイタルデータや肌データなど、ユニークなデータをかけ合わせてデータベース(DB)に保管して、しかもすぐにデータ連携・活用できる体制を整えている。
そのDBがあり、共創力と実装力をかけ合わせるのが薬王堂のコアコンピタンス、強みになっている。さらにそのDBがあることで企業やスタートアップとの連携も広がる。数カ月かけてミーティングして方針を決め、また数カ月もかけてデータを整理してというプロセスが不要で、最短で1か月でサービス開発というケースもある。様々なスタートアップとの共創によって、薬王堂は事業をスピーディに実行する力がついた。
インキュベーション事業はビッグデータ事業を補完するものになる。様々な企業、スタートアップと共創する中で3つのテーマを掲げている。その一つはDX(デジタルトランスフォーメーション)。DXは薬王堂の小売事業をより効率化、生産性をアップする観点で組めるメンバーを探す。もうひとつがヘルス&ビューティで、健康とビューティという軸で一緒に組むことでよりお客様に価値のあるサービスを開発し提供する。合わせて3つ目はニューコンテクストで、SDGsに関するテーマを持った企業とともに、注力している分野が「環境」と「ニューロダイバーシティ」つまり福祉。この2つの文脈に注力し、これからも様々な企業やスタートアップとコラボレーションすることで、社会課題の解決につながる事業創出を目指していきたい。
各プログラムの詳細
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