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ロピアと近接!熾烈な価格競争を展開するフーコット5号店「三芳店」売場レポート

ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)の子会社でディスカウントスーパーを展開するフーコット(同/新井紀明社長)は埼玉県三芳町に5号店「フーコット三芳店」(以下、三芳店)を1月23日に開店した。この店はどんな売場づくりをしているのだろうか。
調査日=2024年2月10、11日 ※本文中の価格はすべて本体価格

生活道路沿いに出店するフーコット三芳店。最寄り駅は東武東上線の「みずほ台」駅だが、約1.5㎞離れている

ベッドタウン三芳町に出店

 三芳店が立地する三芳町は埼玉県南部に位置し、東京から30kmと「東京に一番近い(市区でない)町」として知られる。人口は約3万7400人。交通アクセスがよく、「富の川越いも」の産地であり、農業も盛んだ。企業の工場や倉庫が多いものの、最近はマンションも増えており、店の隣には大型マンションが建設中だ。

 フーコットは2021年8月に1号店「飯能店」(埼玉県飯能市)を出店した。飯能店の店舗形態は同じヤオコーの子会社であるエイヴイ(神奈川県/八塩直之社長)の相似形のようだったが、22年3月に開店した3号店「昭島店」(東京都昭島市)からはブラッシュアップされたようで独自のスタイルを確立。それを進化させたのが23年9月に開いた4号店の「深谷店」(埼玉県深谷市)で、売場づくりはほぼ確立されたような印象を受けた。今回、それをさらに「深化」させたのがこの三芳店だ。

「ロピア」より安い! 恐るべき低価格

 周辺の競争環境を見ていくと、最大の競合となるのは23年7月に開店した「ロピア新座店」(埼玉県新座市)だ。三芳店とは直線距離約で2㎞、クルマで約10分の距離にある。ロピア新座店では、ロピアが得意とする手間をかけた商品づくりやユニークな売場演出が見られた一方で、三芳店では、店内BGMもなく、販促物も限定的で合理性を追求した売場づくりとなっている。地域住民は「フーコット派」となるのか、「ロピア派」か、それとも両店を巧みに利用するのかが気になるところだ。

 「フーコット」と「ロピア」、両チェーンとも低価格を強みとするチェーンであるため、参考までに主要商品の価格を比較してみた(カッコ内前者がフーコット三芳店、後者がロピア新座店の価格)。青果では「レタス1玉」(159円、199円 ※2個300円)、「モヤシ200g」(17円、24円)、福岡県産「あまおう1パック」(599円、799円※2パック1111円)だった。

レタスは1個159円とロピア新座店と比べて40円も安かった

 日配では「無調整牛乳1000mℓ」(172円、193円)、「明治・ブルガリアヨーグルト400g」(125円、159円)、「タカノフーズ・極小粒ミニ3P」(59円、68円)、「ハーゲンダッツジャパン・ミニカップ」(209円、219円)とこちらもフーコットの安さが際立つ。

 加工食品・酒類では「日清食品・カップヌードルしょうゆ」(139円、148円)、「ハウス食品・バーモントカレー230g」(179円、198円)、「にんべん・つゆの素1ℓ」(333円、333円)、「伊藤園・お~いお茶2ℓ」(119円、139円)、「ロッテ・チョコパイ9個」(279円、279円)、「アサヒビール・スーパードライ350mℓ×6」(969円、975円)、「サントリー・角瓶700mℓ」(1440円、1440円)だった。このように多くの部門において「フーコット」がロピアを上回る低価格を訴求しており、お客は「安い」というイメージを強烈に受けたことだろう。

 三芳店に視点を戻そう。同店の売場面積は3号店「昭島店」(1080坪)とほぼ同じ1038坪となっている。売場スペース構成比は生鮮が27%、日配は21%、両部門合計で48%を占め、昭島店と比較すると両部門で5ポイント、飲料は2ポイント高まったが、加工食品は3ポイント、催事は3ポイント低下した。

 部門別に売場を見ていこう。青果売場は約100坪。生鮮売場の48%を占めている。入口付近には果実を壁面24尺で展開、目玉の「バナナ1房」(399円、3本89円)は夕方にはほぼ完売していた。旬のイチゴは平台で展開。埼玉県産「清華」(1パック499円)と「あまりん」(同799円)を軸に、福岡県産「あまおう」(各599円)なども扱う。

 青果の核となっているのが左壁面48尺で「キュウリ1本」(49円)、「キャベツ1個」(79円)をはじめ、レタス、ブロッコリー、大根などを価格訴求していた。どの商品もEDLP(エブリデイ・ロープライス)で提供しておる、来店客の大半が購入していた。

 平台では「白菜1/4カット」(69円)、「同1/2カット」(129円)、「同1玉」(199円)を提供。平場では34尺で訴求品、冷蔵ケース76尺でトマトや葉物、薬味、カット野菜、もやしを展開。トマトはサイズ別に販売している。

愛知県産のミニトマトで、フルーツトマトとも呼ばれるクレア

鮮魚は販売高を追わずに利益重視?

 鮮魚売場は左壁面32尺で昆布、カキ、丸物など約50品目を展開しており、「真アジ2尾」(299円)、「真イワシ」(100g当たり59円)、「金目ダイ」(980円)、「アンコウ鍋セット」(980円)などを販売。正面壁面の平台冷蔵ケース64尺では、ウナギ、塩干、珍味を扱い、8尺で見切りコーナーを配置。棚は2段で上段に約75品目、下段に約44品目を並べる。

塩こうじに漬けた甘口の「銀鮭の大切り」は2切れ399円

 主な商品は「ちりめん」(100g459円)、「真アジ開き2枚」(299円)、「イワシ丸干し5尾」(299円)、「ほっけ干し」(399円)など。開店時は売れ筋商品20~30パックを陳列しており、昼にも商品を補充していて16時頃には8~9割が売れてしまっていた。日替わりの目玉商品は正面12尺の平台で提供し、調査日は三陸沖産「真サバ1尾」(199円)、「黄金カレイ1切れ」(100円)を提供。こちらは午前中に完売していた。

「真アジの開き」は2尾299円で販売

 平場の平台冷蔵ケースは32尺。左サイドには刺身26品目を展開。チリ産「トラウトサーモン冊」(100g299円)、スペイン地中海産「本マグロ中トロ用」(同799円)のほか、この日は日替わりでバヌアツ産などの「メカジキ(解凍)」(同99円)を1家族2点で限定販売していた。商品によって数量が異なり、売れ筋商品は補充がされているが、「売り切れ御免」の販促で16時頃はほとんど売れてしまっている。

 鮮魚の取扱アイテム数は約440品目とほぼフルラインの展開。販売量に応じた数量をセンターから納品しており、売れ筋については正午頃に補充が行われるが、その後は「売り切れ御免」としているようだ。専任の女性スタッフが商品の状態を逐一チェックしており、鮮度もしっかりと管理されている。鮮魚は販売高は追いかけず、ロスを極力減らし、利益を確実に確保する体制であるようだ。

精肉は量感重視で売上増を志向!

 精肉売場は部位別のシンプルな陳列となっており、スペースは牛肉が32尺、豚肉が48尺、鶏肉・ひき肉は44尺の計124尺で展開。精肉は量感を重視し、日替わり商品とEDLP販促で売上の最大化をねらった売場であるように筆者の目には映った。

 開店時でも特売商品はスペースをしっかりと確保して山積みにしており、調査日はチラシ掲載商品である豪州産「牛肩ロースうすきりステーキ用」(100g169円)、メキシコ産「豚ロース切り身」(同79円)などを大きく展開。EDLPでは、群馬県産「三元豚モモうす切りスライス」(同129円)、「牛豚合いびき肉特大」(同99円)、宮城県産「若鶏手羽中大」(同99円)を提供していた。

カナダ産「大麦三元豚バラスライス」は100g当たり124円。大型パックで販売していた

 精肉は全体的に管理というよりも、売上・利益の最大化を重視した売場となっている。大容量サイズも多いのもロピアを意識した対応であるのかもしれない。後編では総菜、日配、加工食品などの売場を見ていく。

(店舗概要)
所在地 埼玉県入間郡三芳町大字竹町沢381-6
開店日 2024年1月23日
売場面積 3428㎡(1038坪)
営業時間 10:00~7:00
駐車台数 296台