有力チェーンがひしめく激戦区、東京・赤羽で2023年7月に開店した「イオンスタイル赤羽」。約38年間営業した旧店をスクラップ&ビルドしてオープンした同店ではどのような売場づくりをしているのか。本稿前編では青果・鮮魚部門をレポートした。後編では精肉、総菜などの売場を見ていこう。
お客が選びやすい売場づくり
精肉では容量別で売場のグルーピングを行っていた。壁面では単品での使い切り、少量アイテムをメインに構成し、平台ではジャンボパックを中心としたまとめ買い用途を意識したコーナーをつくっている。
壁面では、牛肉、豚肉、鶏肉、ひき肉の順でコーナーを展開する。
牛肉売場は、平日のためかボリューム感はなく、陳列量をコントロールしていたようだ。トップはPBのタスマニアビーフ(写真)で、そのほかに国産とアメリカ産を加えている。ブランド肉ごとのグルーピングではなく、焼肉、ステーキ、切り落とし等、用途や部位ごとにまとめられており、目的に応じた商品選択できるようにしている。
さらに、商品の選別を容易にするため、パックにはシールが貼られ、一目でどの商品かわかるようにしている。豚肉も同様の構成であり、好みの商品を選びやすく、予算に応じた商品選択が可能となっている。
価格面においては、同じアイテムであっても容量ごとに価格の違いが少ない。レギュラーと小分けで価格差はほとんどなく、ジャンボパックでも100g当たり3円程度の値下げが中心である。
まとめ買いを促して客単価を上げるのではなく、日常使いの中で購買頻度を上げて、顧客からの指示を高めてようとする姿勢が見られる。
買上点数アップをねらった総菜売場
総菜は店角から18尺のスペースを使い寿司から展開を始めている。鮮魚の刺身同様、お一人様サイズを充実させ、使い勝手の良さと商品の豊富さを併せ持つ展開が行われている。
壁面では、寿司からおはぎ、卵焼き、焼き鳥、天ぷら、鉄板焼き、ピザ類が続き、最後は対面型の量り売りコーナーである「リワードキッチン」へと続く。
動きのある売場づくり、単品量販をめざす商品を集合陳列により、買上点数の増大をねらう売場としてまとまっている印象だ。
平台では、お弁当、丼類、魚総菜を含めたおかずコーナーをはじめ、チルドの麺や鍋、煮物や和惣菜、サラダコーナーが設置。弁当では、レギュラーアイテムを500円前後の価格設定を中心とし、価格訴求アイテムを展開するのではなく、少量サイズで価格幅をコントロールしている。
アウトパックアイテムでは、グループ企業のオリジン弁当や久原醤油のコラボアイテムなどを展開している。チルドアイテムでは、魚や肉を使ったボリューム感のある1人用の鍋(写真)をコーナー化するなど、「簡単・時短・小容量需要」をねらった取り組みが確認できた。
サラダコーナーは、袋入りのカット野菜を総菜売場にまとめ、青果との棲み分けを明確にしている。青果は家でつくる調理用、即食アイテムについては総菜で扱うという分け方としているようだ。
最後に、最近の需要拡大に合わせて冷凍食品売場に注目したい。
冷凍食品は内装を含めて売場での訴求がしっかり行われている。1つひとつのコーナーをしっかりとつくり、目的購入となる部門やカテゴリーを育てることが日常使いには重要な要素となる。生鮮でも冷凍食品を併売しているアイテムがあったが、冷凍食品売場の売場スペースをしっかり確保した展開はイオンスタイル赤羽全体のイメージに大いに貢献していると言える。
それぞれの日常使いのポイントとしては、青果がオーガニックや減農薬のレギュラー販売強化、鮮魚が対面販売のインパクト訴求、精肉が用途に応じた売場構成、総菜がコーナーの明確化による購入機会の増大が挙げられる。
最近の新店では売場面積などの制約から効率性を重視した売場づくりが目立つが、イオンスタイル赤羽が実践しているような「日常」のニーズをつかむための基本的なポイントについて今一度確認しておきたいところだ。