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「平和堂石山」 11年ぶりにGMSを出店した理由とその進化の中身を徹底解説

平和堂石山の外観

平和堂 石山

〒520-0831 滋賀県大津市松原町13-15
電話:077-531-2820
JR東海道本線「石山」駅より徒歩4分

見どころ
▶専門店と連携して日々開催する「毎日イベント」
▶鮮度と、味にこだわる生鮮食品
▶充実を図った健康志向商品

國松正義店長
「街を明るく、元気にする、地域の皆さんに当店があってよかったと思っていただけるような店をめざします

 平和堂(滋賀県/平松正嗣社長)は2020年11月12日、滋賀県大津市に総合スーパー(GMS)「平和堂石山」(以下、石山店)をオープンした。

 石山店は、JR東海道本線「石山」駅から南東約300mに立地する。1970年に開業した旧石山店は、長年営業を続けてきたが、建物の老朽化が進んだことから2018年8月に閉店し、スクラップ&ビルドによって新店として再スタートを切った。

 石山駅は快速列車の停車駅であり、京都市内へは約15分、大阪市内へは約45分と、都市部へのアクセスに優れる。そのため周辺はマンションの建設が進み、今も人口が増加中だ。

 基本商圏に設定する半径2㎞圏内には2万5228世帯/5万9216人が居住する。同500m圏の年代別人口構成比は、40代が18.7%と最も高く、次に30代が16.9%、70代以上が13.7%と続く。旧店ではシニア層の利用が中心だったため、石山店では品揃えを刷新し、商圏内で増加中の若いファミリー層の取り込みも図った。

 競合店は、「マツヤスーパー大津美崎店」「フレスコ国分店」などがある。しかし衣料品、住居関連品を扱う店は少ない。また地域からの要望が高かったこともあり、石山店は再びGMSとして出店した。ただ利便性の高い品揃えの提供に加え、地域コミュニティを創出する新たな機能を取り入れ、従来のGMSとは異なる店づくりに挑戦しているのが特徴だ。なお、平和堂がGMSを出すのは、09年開業の「アル・プラザあまがさき」(兵庫県尼崎市)以来、約11年振り。

 店づくりを見ていくと、建物構造は4層(売場は1~3階)で売場面積は9060㎡と同社のGMSとしてはコンパクトなサイズだ。1階は食品、2階は衣料品や化粧品、3階は生活雑貨やキッズなどの売場を展開。総取扱品目数は4万2387で、衣料品・住居関連品は絞り込んだ一方、食品は1万507品目と充実させた。

 集客の要とする食品売場は、生鮮食品を強化すると同時に即食商品を拡充。たとえば鮮魚部門では丸魚を豊富に扱う一方、刺身や寿司といった商品にも力を入れる。また青果部門では、店頭の素材を使ったジュースバーを設けるなど、平和堂の最新の商品政策(MD)を取り入れた。

 2、3階の衣料品、住居関連品売場では、ここ数年、平和堂が地道に取り組んできたGMS改革の手法を導入。コーディネート提案や、カテゴリーを超えた関連陳列を行う売場が随所で見られる。

 石山店でもう1つ特筆したいのが、地域コミュニティの創出の取り組みだ。イートインスペースなどを活用し、専門店とも協力しながら日々、料理教室や絵本の読み聞かせなどのさまざまな企画を行う「毎日イベント」を開催。またSNSを通じて店舗や地域情報も発信し、近隣住民との交流を図る。そのほか地域の人々が利用できる「コミュニティルーム」も備えるなど、地域活性化の拠点としての機能を付加した。

 これらの店づくりで石山店は、旧店と比較して2ケタ増となる年商目標約32億4000万円を達成したい考えだ。

売場フォーカス

建て替えにより食品売場を強化

石山店が建て替えで強化したのが食品売場だ。鮮魚部門では、刺身や寿司といった即食商品も拡充。まるでスイーツのような見た目にもこだわった商品も取り入れた。一方、対面コーナーには従業員が常駐し、鮮度の高い素材の提供にも力を注ぐ

「ジュディ フルラボ」コーナー

青果部門の一角では、店頭の素材を使ったジュースやサンドイッチなど、果物を手軽に楽しめるコーナーを設置。洗練された売場の演出にもこだわり、建て替え前は少なかった若いファミリー層の獲得につながっている

日本三大和牛「近江牛」を品揃え

精肉部門では日本三大和牛の1つに数えられる近江牛を品揃えする。また、交雑種として平和堂の独自ブランド「あじわい牛」も販売。連携牧場は他県にもあるが、石山店では滋賀県産の牛肉だけを扱う

鉄板で調理した出来たて総菜

総菜部門では、鉄板を使って店内調理したメニューを提供する「テッパンキッチン」コーナーを設置。お好み焼きや焼きそばのほか、写真の「だし香る手づくり出し巻き」などを販売していた

健康志向の商品を集積

加工食品は、健康志向の商品を積極的に取り入れ、売場の各所でコーナー化した。写真は具体例の1つで「“手軽に”バランス栄養食品」コーナー。POPを活用し各商品の機能をわかりやすく伝えていた

コミュニティ創出の場や機会を提供

1階に設置した約80席のイートインコーナーでは、料理教室や試食会など各種イベントを開催。同コーナー内のテナントのカフェは朝8時30分からモーニングサービスを提供する

和菓子の人気専門店を誘致

1階には大津市に本社を置く、高品質な和菓子で人気の専門店「叶匠壽庵」がテナントとして入る。百貨店にも多く売場を構える全国的に知られる存在で平和堂としては初の試み

回遊性を高めるフロアレイアウト

2階には衣料品のほか化粧品や医薬品などの売場を展開。ワンウェイのフロアレイアウトを採用し、主通路に沿って歩けば、フロア全体を回遊できるよう設計した。各所にマネキンを設置しコーディネート提案を行う

「テレワークコーナー」を設置

3階には生活雑貨やキッズ関連売場を配置。生活雑貨売場では、リモートワークが広がる新しい生活様式に対応し、テーブルやイスなどを集積して「テレワークコーナー」を設けていた

レイアウト

店舗概要

オープン日 2020年11月12日
店長 國松正義
営業時間 9:30~21:00
駐車台数 170台
投資額  31億6000万円 
建物構造 鉄骨造り4階建て(売場は1~3階)
売場面積 9060㎡(うち直営5350㎡)
 従業員数 正社員29人、パート・アルバイト130人
(8時間換算)
取扱品目数 4万2387品目(食品1万507、衣料品1万1211、
住居関連品2万669)

記者の目

旧石山店は、1957年創業の平和堂が4番目に開店した歴史ある店舗だ。開業に合わせて商品部を開設したほか、設備管理会社も設立している。これを機に同社は滋賀県および福井県を中心に年間1~3店の出店を開始することになる。その意味で、チェーン展開の起点となった、同社にとって思い入れの深い店舗とも言えよう。こうした歴史ある店舗も建て替え、さらに新たな店づくりに挑戦している点から、成長のために改革を続けるという強い意志を感じた。